論文

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2020年3月

「J・B・プリーストリーの「ポストスクリプツ」 ── 戦時ラジオ放送とビクトリア朝文学 ──」

『早稲田大学高等研究所紀』
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  • 川島健

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記述言語
日本語
掲載種別
研究論文(大学,研究機関等紀要)

本塙は、J・B・プリーストリーのBBC ラジオ放送「ポストスクリプツ」(1940 年6 月~10 月)を取り上げ、彼が文学を用いて描出する市民的連帯の可能性と問題点について考察する。当時プリーストリーの放送と人気を二分したチャーチル首相の放送は、国民の愛国心を国家への忠誠と軍隊への信頼へと昇華することを目的とした。それにたいしてプリーストリーは、愛国心を国家ではなく前近代的な共同体に求めた。注目すべきは、素朴な市民生活の描写が英国文学の引用と並置されることだ。文学との類比の目的は、市民の連帯を涵養することだったが、それは政治的に無辜とはいえない。本発表は、プリーストリーの市民生活のモデルがビクトリア朝文学によって理想化されたことの問題点を指摘する。そしてプリーストリーの文学的嗜好と戦意高揚の策略において歴史性が決定的に欠落していることの弊害を論じる。

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共同研究・競争的資金等の研究課題
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