2001年 - 2002年
移行上皮特異的膜蛋白質ウロプラキンの基楚的研究と臨床応用
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
ウロプラキン(UP)Ia、Ib、II、IIIは尿路上皮に対して、組織特異的で分化依存性の膜蛋白賞である。われわれは膀胱移行上皮癌におけるUPIaの発現を検討することによって、組織学的腫瘍マーカーとしての有用性を評価した。まずヒトUPIaのアミノ酸前列の一部を合成して免疫原とし、家兎ポリクローナル抗体を作製した。免疫組織化学的検討では、この抗体は移行上皮以外のいずれの細胞にも交叉反応性を示さず特異的であった。さらに、ヒトUPIa遺伝子の臓器特異性について全身主要臓器を対象にしたRT-PCR実験の結果、尿路上皮と移行上皮癌組織にだけ発現していることが確認された。根治的膀胱全摘除術を施行された症例と癌死した剖検例から得られた組織標本を用いて、免疫組織化学的に移行上皮癌細胞におけるヒトUPIaの発現を調べた。全摘症例において63例中61例(96.8%)の原発巣が陽性所見を示した。高・中分化癌18例中17例(94.4%)、低分化癌45例中36例(80.0%)において、50%以上の癌細胞が陽性に染色された。表在癌では22例中20例(90.9%)、浸潤癌では41例中33例(80.5%)が陽性であった。UP高発現群と低発現群の癌特異的5年生存率は、それぞれ68.6および75.0%で、統計学的有意差は認められなかった。転移巣においては、18病巣中13部位において陽性反応が確認された。このような安定したヒトUPIa蛋白質の発現状況から、この蛋白質は非常に優れた移行上皮癌の組織学的マーカーになることが期待できる。また、正常尿路上皮、膀胱尿管逆流症、間質性膀胱炎、膀胱癌の各細胞において、UPIaのスプライシングバリアントを検索した。その結果、エクソン4が欠損した亜分子が存在することが判明した。現在、各種病態における存在量の定量化を試みている。
- ID情報
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- 課題番号 : 13671648
- 体系的課題番号 : JP13671648