2006年 - 2007年
新たな遺伝子タイピング法の開発と院内感染対策への応用
日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究(B) 若手研究(B)
院内感染対策として,MRSAを型別し,感染源や感染経路を把握することが重要な課題となっている。本研究では,遺伝子タイピングのgold standardであるPFGE法と,迅速な遺伝子タイピング法として汎用されているAP-PCR法に加え,複数のVNTRを同時に検出するmultiple-locus VNTR analysis(MLVA)を行い,MRSAの遺伝子タイピングにおける有用性を比較検討した。その結果,各種遺伝子タイピング法の単独での解析能を比較すると,AP-PCR法とMLVAがそれぞれ24,28パターンであったのに対し,PFGE法は36パターンと最も優れていた。しかし,PFGE法は解析に約5日間を要するため,院内感染対策上迅速性が求められる場合には,他法との組み合わせが必要と考えられた。組み合わせる数を増やすと解析能は当然高まるが,費用等を考えると実務上は2法が望ましい。そこで,AP-PCR法とMLVAの特性を総合的に比較評価したところ,AP-PCR法は再現性に乏しく結果の解釈が難しいという面で劣っていた。院内感染対策上,PFGE法と迅速遺伝子タイピング法のいずれかを組み合わせるとすると,MLVAが現段階では最適と考えられた。今回MLVAで用いた5領域7遺伝子に加え,VNTRを有するcna,coa,fnBP,pls遺伝子やsas遺伝子を併用することで,さらなる解析能の向上が期待される。また,VNTRを有する遺伝子は他の菌種においてもみられるため,バンコマイシン耐性腸球菌や多剤耐性緑膿菌なども含め,多くの菌株の解析にも応用可能と考えられた。
- ID情報
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- 課題番号 : 18790372
- 体系的課題番号 : JP18790372