2019年4月 - 2023年3月
薬理ゲノミクスを基軸とした突発性味覚障害発症の分子基盤の解明
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
突発性味覚障害は、「味がしない、いつも苦い」などの症状を示し、生活の質だけでなく栄養状態も著しく低下させる。しかし、その発症機序はほとんど不明なため、治療法は亜鉛投与などの対処療法しかない。近年我々は、昇圧ホルモン・アンジオテンシンIIが塩味を抑制することを明らかにし、これが降圧剤による薬剤性味覚障害の原因である可能性に気づいた。そこで本研究では、逆の発想で、様々な薬剤の薬理作用と新三次元幹細胞組織培養法“味蕾オルガノイド”を切り口として原因分子を探索し、その遺伝子欠損マウスを解析することで味覚障害発症の分子基盤を解明することを目的とした。本研究により味覚障害の新たな予防・診断・治療 法の開発が期待される。今年度も初年度に引き続き、“口腔内苦味”を副作用とする薬剤24種類の薬理作用を切り口としてターゲット分子を予想しつつ、分子生物学的解析および味蕾オルガノイドを用いた解析を行った。この結果、(1)抗不整脈薬フレカイニドによる味覚障害の発症に酸味受容体オトペトリン1が関与している可能性が示唆された。また、(2)苦味受容に関わる特異的分子を明らかにするために苦味特異的Gタンパク質ガストジューシン-GFPマウスをもちいて単一細胞RNAseq解析を行い、苦味特異的遺伝子群を同定しつつある。(3)その他、複数の薬剤(解熱鎮痛剤、高コレステロール血症治療薬、口腔乾燥保湿薬など)のターゲット分子が味蕾の味細胞に発現していることを分子生物学的解析により明らかにし、味覚障害発症の原因分子となり得る可能性を見出した。
- ID情報
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- 課題番号 : 19H03818
- 体系的課題番号 : JP19H03818