MISC

2009年12月

就学前児社会スキル尺度と広汎性発達障害(PDD)との関連

厚生の指標
  • 篠原 亮次
  • ,
  • 星野 崇宏
  • ,
  • 杉澤 悠圭

56
15
開始ページ
20
終了ページ
25
記述言語
日本語
掲載種別
出版者・発行元
厚生統計協会

目的 本研究は,発達障害のなかでも特に社会性の障害をその特徴とする広汎性発達障害(PDD)に焦点を当て,就学前児用社会スキル尺度(第1因子:協調,第2因子:自己制御,第3因子:自己表現)の下位尺度得点との関連およびその予測妥当性を検討することで,社会スキル発達リスク該当児の早期発見,早期支援への一助とすることを目的とした。方法 対象は,2000年から2006年にかけて,全国夜間保育園連盟に加入している21都道府県98ヶ所の認可保育園に在籍している2歳から6歳までの園児である。方法は,各保育園の担当保育士が,年1回,就学前児用社会スキル尺度を用いて各園児の社会スキルを評価した。また,発達障害に関しては,2006年および2007年に各園で「気になる子ども」としてあげられた園児の中から,医療機関の診断,所見で発達障害(PDD,ADHD(注意欠陥多動性障害),MR(精神遅滞))の確定もしくは疑いの診断をうけている園児のデータを訪問調査の協力を得た各保育園から収集した。分析は,発達障害の確定もしくは疑い該当児を除く園児を「非該当」,PDD該当児を「PDD該当」と2群に分類し,年齢ごとに就学前児用社会スキル尺度の各下位尺度得点に関して2群間の平均値の差の検定を実施した。つづいて,PDD(該当,非該当)を目的変数,就学前児用社会スキル尺度の各下位尺度得点を説明変数としたロジスティック回帰分析を年齢ごとに実施した。結果 各下位尺度得点に関して,「PDD該当」児と「非該当」児それぞれの平均値は,年齢経過にしたがって平均値の推移に大きな差がみられた。「非該当」児では,年齢の経過とともに各下位尺度得点の平均値が上昇していく傾向があるが,「PDD該当」児では推移の変化に乏しい。特に4歳以降では「非該当」児と「PDD該当」児のすべての下位尺度得点平均値が有意な差を示しており,「PDD該当」児の社会スキルは「非該当」児に比較して低いことが示された。一方,ロジスティック回帰分析結果では,2歳,3歳において第3因子(協調)でのみ,また4歳,5歳,6歳ではすべての因子で有意な関連がみられた。結論 就学前児用社会スキル尺度は,4歳以降では「PDD該当」リスクが社会スキル尺度の全因子で,また医療機関の診断が確定しにくい2歳,3歳では,第3因子(自己表現)の下位尺度得点で,「PDD該当」への移行を把握可能であることが示唆された。本尺度が,子育て支援専門職にとってPDD児の早期発見,早期支援のための評価手法の一助となることが期待される。(著者抄録)

リンク情報
CiNii Articles
http://ci.nii.ac.jp/naid/40016918709
ID情報
  • ISSN : 0452-6104
  • 医中誌Web ID : 2010077054
  • CiNii Articles ID : 40016918709

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