論文

2015年12月

日中母語話者の繰り返しを含む会話の連鎖からみえる会話スタイル―質問-応答場面の連鎖を中心に―

多文化関係学
  • 荻原 稚佳子

12
開始ページ
39
終了ページ
55
記述言語
日本語
掲載種別
研究論文(学術雑誌)
DOI
10.20657/jsmrejournal.12.0_39
出版者・発行元
多文化関係学会

<p>本研究は、日本語母語話者(JNS)の会話の中で、特に、テンポよくやり取りされ習慣的に行われている繰り返しを含むやり取りの連鎖があるのかどうかを調査した上で、それがJNSと中国語母語話者(CNS)の間でどのように捉えられているのかを調査・分析したものである。独話における談話構成に対する志向である会話スタイルと同様に、会話のやり取りの仕方に対する志向である会話スタイルもあるという仮説をたて、JNSとCNSで比較した。JNS 18組の自由会話から「①質問―②回答―③繰り返し」の連鎖が、やり取りの習慣的・規範的なやり方である会話の連鎖として確認された。この連鎖は②回答の一部、または全部をキーワードや言いさしにより繰り返すというやり取りである。その後、繰り返しを含む会話の連鎖と含まない連鎖を比較することで、JNSとCNSにアンケート調査を行った。その結果、JNSの8割~9割が、「①質問―②回答―③繰り返し」の連鎖を楽しく盛り上がっている会話と捉え、自分も同様の話し方をし、相手にも同様の話し方を望むということが分かり、規範的に期待される会話の連鎖であり、この会話の連鎖に対する志向、つまり会話スタイルの一つとなっていることがわかった。一方、CNSは、3割以上の人が③繰り返しのない隣接ペアである「①質問―②回答」の連鎖のほうが楽しそうで盛り上がっていると捉え、自分も同様の話し方をすると認識し、相手にも同様の話し方を望んでいるとわかった。つまり、日本語母語話者とは異なる志向、つまり、やり取りに対する異なる会話スタイルを持つ人がいることがわかった。この違いは、接触場面においてコミュニケーション上の不都合を生む可能性があると言える。</p>

リンク情報
DOI
https://doi.org/10.20657/jsmrejournal.12.0_39
CiNii Articles
http://ci.nii.ac.jp/naid/130005304045
ID情報
  • DOI : 10.20657/jsmrejournal.12.0_39
  • CiNii Articles ID : 130005304045

エクスポート
BibTeX RIS