2005年 - 2006年
白血病発症におけるE3ユビキチン・リガーゼの機能解析とその臨床応用
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
急性前骨髄球性白血病(APL)はオールトランスレチノイン酸による寛解導入療法が導入されて以来、治療成績が飛躍的に向上している。その一方で一部の症例においてレチノイン酸が無効な症例が存在する。急性前骨髄球性白血病の90%以上の症例において認められるPML-IURαはレチノイン酸によりアミノ末端が切断され分化に必要な遺伝発現の抑制が解除されることが報告されたこと、PML-RARαはコリプレッサー複合体と結合することにより転写を拍制することが知られているため、その詳細な機序を検討した。はじめに、免疫沈降法により、APL細胞株NB4細胞のPML-RARα蛋白とN-CoRの結合を確認した。次に、レチノイド応答配列(RARE)を有するRARβのプロモーター領域を組み込んだルシフェラーゼベクターを作製した。PML-RARαおよび5'領域を欠損させたPML-RARαΔPML-RARα発現プラスミドをルシフェラーゼベクターとともにHEK293T細胞に強制発現したところ、PML-RARα導入細胞ではRARE応答配列の転写活性の抑制が認められたが、ΔPML-RARα導入細胞では転写活性の抑制が解除された。さらに、N-CoRの蛋白修飾についてPML-RARα導入細炮とΔPML-RARα導入細胞を比較したところ、N-CoRのユビキチン化の変化は見られなかったが、PML-RARα細胞ではΔPML-RARα導入細胞と比較してN-CoRがより強くSUMO化されていることがわかった。以上より、PML-RARαはそれ自身に結合したコリプレッサーのうちN-CoRをユビキチン化、SUMO化するE3ユビキチン・リガーゼとして働き、RARE転写活性を抑制すること、レチノイン酸によりPML-RARαのアミノ末端が切断されることにより、そのE3ユビキチン・リガーゼとしての機能が阻害され、転写活性が回復することが示唆された。
- ID情報
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- 課題番号 : 17590075
- 体系的課題番号 : JP17590075