共同研究・競争的資金等の研究課題

2020年4月 - 2023年3月

木材だけの力で創る新たな木材改質処理法の開発

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(C)  基盤研究(C)

課題番号
20K06174
体系的課題番号
JP20K06174
担当区分
研究代表者
配分額
(総額)
3,900,000円
(直接経費)
3,000,000円
(間接経費)
900,000円

今年度は前年度に引き続き、加圧熱水処理反応液の生成条件の検討や反応液の注入処理条件の検討を行った。スギ木粉に純水を加えてスラリー状にし、反応容器へ注入して、様々な処理条件で加圧熱水処理を行った。そして、得られた反応液を濃縮した後、スギ辺材試片へ減圧注入した。注入後、送風乾燥器で乾燥させて注入成分を乾固させ、注入処理による質量増加率と体積膨潤率(バルキング)を測定した。そして、試片中に純水を8時間減圧注入した後に寸法を測定し、寸法安定性の指標となる抗膨潤能(ASE)を算出した。その結果、スラリー濃度が10wt%、処理温度が220℃、処理圧力が10MPa、処理時間が30分で、二酸化炭素の雰囲気下で加圧熱水処理した反応液を25w/v%に濃縮して注入し、95℃/2時間、続いて180℃/3時間の乾固条件で乾燥させる処理条件が、最も高いASE(47%)を示すことが明らかとなった。また、注入試片のバルキングとASEの関係を調べた結果、両者に高い相関が見られたことから、注入した反応液中の成分が試片内で乾固し、細胞壁を膨潤させたことでASEが向上したものと推測された。
また、高速液体クロマトグラフィを用いて加圧熱水処理反応液を分析したところ、有機酸類と5-ヒドロキシメチルフルフラール (5-HMF)が特に多く含まれることが明らかとなった。そこで、有機酸の例としてシュウ酸と5-HMFを木材に注入し、ASEを評価した。その結果、シュウ酸と5-HMFを1:2の割合で溶解させた25w/v%水溶液を注入させた木材のASEは71%と非常に高い値を示した。このことから、加圧熱水処理反応液の注入試片においても有機酸類および5-HMFがASEの向上に大きく関与している可能性が高いことが明らかとなった。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-20K06174
ID情報
  • 課題番号 : 20K06174
  • 体系的課題番号 : JP20K06174