共同研究・競争的資金等の研究課題

2017年4月 - 2020年3月

微細構造をもつ不均質物質通過後の粒子線線量分布計算法

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(C)  基盤研究(C)

課題番号
17K09074
担当区分
研究分担者
配分額
(総額)
4,810,000円
(直接経費)
3,700,000円
(間接経費)
1,110,000円

高エネルギー荷電粒子線を用いたがん治療の良し悪しは、治療計画において、粒子線により体内に付与される線量分布を精度よく予測できるかに強く依存する。本件は、粒子線がCT画像では捉えられない微細な構造をもつ不均質物質(固定具や肺組織)を通過した際に生じる線量分布の変化を調べ、これをモデル化することで、CT画像の部分容積効果に起因した線量分布の計算誤差を軽減するための汎用的なアルゴリズムの開発を目的とする。
平成29年度には、固定具材(不均質物質)を通過した際に生じる粒子線の線量分布の変化(Braggピークの拡大)を調べた。ここでは、固定具材を厚さ15, 30 cmのブロック状に加工し、それらを水槽の上流に設置した。ここに加速された炭素線を照射し、固定具材通過後の水中深部線量分布を平行平板電離箱で測定した。次に、固定具を水と空気の微小な立方体が無作為に配列された物体であると仮定し、物体通過後の粒子線のBraggピーク広がりを、確率論に従って表現する数学アルゴリズムを開発した。測定した深部線量分布に対して本アルゴリズムを適用し、固定具材固有の広がりパラメーター(阻止能比と粒状性)を決定した。更に、決定したパラメーターを用いて粒子線の深部線量分布を計算する線量計算ツールを開発した。これにより、任意の厚さの固定具材を通過した粒子線の深部線量分布を予測することが可能になった。これらの結果については、国際学会で発表した。
平成30年度には、前年度に開発した数学アルゴリズムを炭素線治療用の治療計画(線量計算)機能に組み込んだ。これにより、実際の患者例について、固定具や肺組織などの不均質物質を通過した炭素線が患者体内に付与する線量分布を予測することが可能になり、不均質物質による線量分布の変化が治療に及ぼす影響を評価できるようになった。この結果については、国際学会で報告する予定である。

ID情報
  • 課題番号 : 17K09074