共同研究・競争的資金等の研究課題

2018年6月 - 2021年3月

ピアノ演奏におけるフレージングの意図伝達と個性表出に関する研究

日本学術振興会  科学研究費助成事業 挑戦的研究(萌芽)  挑戦的研究(萌芽)

課題番号
18K18491
配分額
(総額)
6,240,000円
(直接経費)
4,800,000円
(間接経費)
1,440,000円

音楽演奏者は、楽譜に書かれた作曲家の意図を読み取り、自身の解釈を加えて、音として実体化する。聴取者は、その演奏聴取を通じて奏者の個性を聞き取る。音楽の専門家でなくても、当該ジャンルを聴き込んだ者であれば、特段意識せずとも奏者の個性は理解できるものであるが、個性を識別できる理由や、その背景となる情報処理メカニズムについてはよくわかっていない。本研究課題は、個性表出の対象としてフレージングに着目して、この問題に迫るものである。
初年度は、BeethovenのPiano Sonata No. 8, Op. 13「悲愴」第2楽章ほか数曲を題材として、コンテスト受賞歴のあるピアニスト12名による演奏について、聴取者の側が、演奏者の想定した構造を受容できるかどうかの調査を行い、フレーズ意図の伝達度合いが高い演奏、そうでない演奏を分離・抽出するための類似度算出手法を検討した。予備実験として、楽器演奏経験のある者を中心に男女31名に対し、演奏者と同様のフレーズ構造記述方法を解説した後、順番に演奏を聴かせ、強弱記号などの演奏指示のない五線譜上に、聴取したフレーズの範囲と頂点を書き込んでもらった。演奏者と聴取者の捉えたフレーズ構造の類似性については、演奏者と聴取者の捉えた各フレーズ構造から連続した二つの階層から、フレーズ開始音から構成される音符集合を抜き出し、その集合に対して、類似性指標が最大になる階層レベルの組を求めた上で、フレーズ開始音、頂点音、終了音の各音符集合に対して類似性指標を計算する手法を用いた。
以上を通じて、(1)演奏者の意図したフレーズ構造の解されやすさを一覧して俯瞰できるようになった、(2)フレーズ構造の解されやすさについての順位付けができるようになった、(3)フレーズ開始音あるいは頂点音等の構造を担うデータ別に演奏表現の解されやすさも捉えることができるようになった。

ID情報
  • 課題番号 : 18K18491