はじめに
 ギリシアの初期鉄器時代(EIA)に関する研究が今後日本で進展していきますように願いを込めて、基本文献や情報を記していきます。
初期鉄器時代とは?
 ギリシアの初期鉄器時代は、ミケーネ文化が崩壊したあと青銅器時代が終焉を迎え、鉄器時代へと突入した最初の数世紀です。絶対年代では、大まかに言えば、前11~8世紀前後の時期に当たります。かつては暗黒時代とも言われていたが、現在では調査や研究の進展により「暗黒時代はもはや暗黒ではない」とも言われるようになり、初期鉄器時代という名称の方が一般的となっています。
鉄の技術
 ギリシアの人たちがどのように鉄に関する技術を獲得したのかという点に関しては議論があり、今のところ意見の一致はみられていません。ヒッタイトが滅亡したことによる技術流出が有力説の一つです。ほかには 不安定な情勢が災いしてキプロスとの交易が行われなくなり、青銅の原料を入手できなくなったことが鉄器への移行の要因であると見なす意見などが提出されています。
「古典的」概説書
 下記の三冊は、初期鉄器時代に関する「古典的」概説書です。この時代の研究を志す者にとって、今でも必読の文献です。出版年代順に記します。

1)A.M.Snodgrass, The Dark Age of Greece: An Archaeological Survey of the Eleventh to the Eighth Centuries BC, Edinburgh, 1971 (reprint: New York, 2000).
(土器、墓制、金属製品、社会状況などが扱われている総合的な内容)

2)V.R.d'A.Desborough, The Greek Dark Ages, London, 1972.
(初期鉄器時代でも前期(原幾何学文様期)に関する業績が際立つ研究者による概説書で、青銅器時代終末期から扱っている点が特徴 )

3)J.N.Coldstream, Geometric Greece, Methuen, 1977 (2nd ed., Routledge, 2004).
(初期鉄器時代でも後半期(幾何学文様期)の土器の専門家による幾何学文様期に関する概説書)