論文

2017年3月31日

「「東京文化コード」とローカライズド文化―沖縄芝居と宝塚歌劇を例に―

『「近代日本」空間下の東アジア大衆演劇 論文集』
  • 細井尚子

開始ページ
282
終了ページ
315
記述言語
日本語
掲載種別
研究論文(学術雑誌)
出版者・発行元
立教大学アジア地域研究所

近代の幕開けである明治時代は、芸能の水脈に分断をもたらした時代でもある。歌舞伎が江戸のままでいることを許されず、改良の矢面に立たされたことが示すように、あるいは現在の国立劇場の養成機関が、江戸以前に形成されたものに対してはそのジャンルを支える人材養成に重心を置いて無料で行われ、明治以降に娯楽市場に着地するバレエなどはそのジャンルを牽引する人材育成を目的に有料であるように、日本の芸能(パフォーマンス)は近代と現代は地続きだが、近世と現代はそうではない。
近代に東京を舞台に形成された近代日本の文化コード(仮に「東京文化コード」とする)は、江戸の文化の延長上に発生したものではなく、「近代日本」空間に覆われた地の芸能は、東京を含め、いずれもそれ以前の芸態から東京文化コードを標準に、折り合いをつけねばならなかった。
琉球時代の沖縄では、王府の外交の具としての芸能(御座楽、組踊、舞踊、唐踊)や、民間の宗教的文脈における芸態は存在したが、「興行」はなかった。一つの国である琉球が琉球藩になり、沖縄県になる過程で、王府の芸能は民間で「興行」として現れ、沖縄の人々の娯楽として沖縄芝居を形成する。宝塚歌劇はよく知られるように電鉄の乗客増加策の1つとして誕生し、「歌舞伎の歌劇化」をめざし、「歌劇の歌舞伎化」で定着する。この過程における演者の「それ」を演じるための身体性に注目して、東京文化コードとの折り合いの付け方をみる。

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