共同研究・競争的資金等の研究課題

2006年 - 2007年

軟X線定在波を用いた磁気円二色性による磁性多層膜界面の評価

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(C)  基盤研究(C)

課題番号
18560003
体系的課題番号
JP18560003
配分額
(総額)
3,710,000円
(直接経費)
3,500,000円
(間接経費)
210,000円

Fe/Si磁性多層膜は、厚さ1nmほどの拡散層があるにもかかわらず、反強磁性層間結合が強く現れる系として注目されている。しかし、そのメカニズムについてはまだ決着が付いていない。本研究では、1)軟X線定在波を利用した内殻吸収磁気円二色性(MCD)によって界面近傍のFe 3d電子の磁気的状態深さ分割して決定し、界面の磁性状態を解明する、2)その結果と、軟X線発光分光から得られる界面拡散層の化学結合状態を比較し、磁性状態と拡散の関連を議論する、3)また以上より、量子波干渉モデルも含めてFe/Si多層膜の強い反強磁性結合の起源を明らかにすること、の3点を研究の目的とした。その結果、Fe/Si多層膜の拡散層では、Fe層に続く強磁性Fe_3Si層の中でスピン、軌道各磁気モーメントが界面異方性により増大していることを確かめた。また、とりわけ反強磁性結合した試料では、Fe_3Si層のより内側の、すなわち、非磁性のFeSi、あるいはFeSi_2層に近い領域で磁気モーメントが増大していることを初めて見出した。これは、スペーサー層(FeSi層とFeSi_2層)を真ん中にして向かい合ったFe_3Si層が、いずれも内側の境界一杯まで強く磁化していることを示している。このことは、実質的に極めて薄いスペーサー層を介してFe_3Si層間に強い反強磁性結合が出現しているとみなすことができる。したがって、これらは、量子波干渉モデルで理解するのが最も妥当と結論できる。以上より、本研究の所期の目的は概ね達成できた。また、定在波を用いた軟X線MCD測定は、磁性多層膜界面の磁性状態を非破壊で深さ分析するのに有用な方法であること、および軟X線発光分光による界面の電子状態評価との併用は、界面についてより多くの知見をもたらすことを本研究によって実証した。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-18560003
ID情報
  • 課題番号 : 18560003
  • 体系的課題番号 : JP18560003