2018年10月 - 2023年3月
多彩な環境応答を示す溶媒誘起力の解明:理論・実験融合研究
日本学術振興会 科学研究費助成事業 国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B)) 国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
- 課題番号
- 18KK0151
- 体系的課題番号
- JP18KK0151
- 担当区分
- 研究分担者
- 配分額
-
- (総額)
- 17,940,000円
- (直接経費)
- 13,800,000円
- (間接経費)
- 4,140,000円
引き続き,水溶液中における疎水性溶質の溶媒和自由エネルギーに対するイオン添加効果の尺度(セチェノフ係数)についての理論的研究を行った.セチェノフ係数の陽イオン・陰イオンサイズ依存性の違いの起源をより明確に理解することを目指した計算を行った.第一に,分子動力学シミュレーションおよび自由エネルギー計算を実行し,セチェノフ係数を二通りの方法で計算し,両者が良く一致することを示した.一つの方法は,溶液構造を反映する相関関数の体積積分(いわゆるKirkwood-Buff積分)から得るものである.いくつかの理論的問題を解決し,最終的に導出した式を用いた.もう一方の方法は疎水性溶質の溶媒和自由エネルギーをイオン添加水溶液と純水において計算し,セチェノフ係数を得るものである.これまで両者の一致がそれほど良くなかったが,その原因を解明することができた.これにより,信頼度の高いセチェノフ係数の計算方法の確立に寄与した.次に,セチェノフ係数の陽イオン・陰イオンサイズ依存性の微視的起源を探った.まず,広いイオンサイズ範囲において,セチェノフ係数の変化は水溶液の充填率あるいはイオンの部分モル体積の変化と相関することを示した.また,単純な疎水性溶質の溶解度は水溶液の充填率と相関することは平均場近似が示唆する.そこで,水溶液の充填率のイオンサイズ依存性について詳細な解析を行った.その結果,陽イオンの場合にはある一定サイズよりもイオンサイズが小さくなると,イオン周囲の水和水の充填率が下がること,またそれは第一水和圏の水分子の配向に依存することを明らかにした.陰イオンサイズ依存性が単調であるのは,充填率がイオン周囲の水の配向に大きく依存しないためであることがわかった.このように,セチェノフ係数のイオンサイズ依存性の微視的起源をモデル水溶液について解明することに成功した.
- ID情報
-
- 課題番号 : 18KK0151
- 体系的課題番号 : JP18KK0151
この研究課題の成果一覧
絞り込み
論文
1-
The Journal of Physical Chemistry B 125(23) 6296-6305 2021年6月17日 査読有り最終著者責任著者