1992年 - 1994年
GEOTAIL衛星による磁気圏尾部の研究
科学研究費助成事業(宇宙科学研究所) 科学研究費助成事業(国際学術研究) 国際学術研究
1.磁気圏尾部の大局的構造 GEOTAIL衛星は地球から100Re(Reは地球の半径)から200Reにいたる磁気圏尾部の遠隔領域の精密な探査を初めて行い、さまざまな新しい知見をもたらした。尾部は約20Reの半径を持ち、その軸は東西南北に半径と同程度の幅で大きく揺らいでいるが、フィラメント状ではなく一体の構造をなしている。尾部内では磁気中性面をはさんで地球向きと反対向きの磁力線が接しており、ローブ領域での磁場強度は±10nT程度である。磁気中性面を貫く磁場の平均は強度が0.5nT程度で方向は北向きである。ルラズマシートには高温(イオンの場合1keV程度)低密度(0.1/ccのオーダー)のプラズマが存在し、殆どの場合100km/sのオーダーの高い速度で地球と反対の方向に流れている。尾部の内部構造は惑星間空間磁場(IMF)の方向に支配されており、磁気圏境界面でのIMFと地球磁場のリコネクションが磁気圏の構造を決定していることを示している。
2.南向きのIMFのもとでの構造 IMFが南向きの時には、尾部の磁力線はローブからプラズマシートに向かって運ばれ、磁気中性面上のX型磁気中性線においてふたたびリコネクトする。殆どの場合、X型中性線の位置は地球から150Re以内である。ローブとプラズマシートの境界には「遅いモード」の電磁流体衝撃波が定常的に存在する。衝撃波の内部とその上流におけるイオンの速度分布関数の変化から、エネルギー変換と散逸の機構を読み取ることができる。加速されたイオンのビームが上流側に流出していることも無衝突プラズマ衝撃波の特徴的な性質である。尾部内でのリコネクション過程は磁気圏嵐の際に活発になり、1000km/sにおよぶ高速の磁力線ループ(プラズモイド)が反地球向きに放出される。プラズモイド内のイオンや電子の速度分布関数は、一方向ビーム、双方向ビーム、温度非等方性など加速機構を直接に反映するさまざまな非平衡性を示す。
3.北向きのIMFのもとでの構造 IMFが北向きの時には、磁気中性面は赤道からIMFの方向に大きく傾いており、磁力線はこの傾いた中性面にそって流れる。中性面の北側と南側の速度は正反対の方向を持つため、中性面には100km/sのオーダーの速度シア-がある。流れを駆動しているのは昼間側高緯度カスプ領域におけるリコネクションであると解釈できる。このリコネクションによってできた開いた磁力線は境界面の一方の側から尾部に入り、中性面に沿う流れによって他方の側に運ばれた後、IMFの磁力線に戻って外に出る。しかし、中性面をはさんでプラズマシートの高温イオン・電子が存在する理由はまだ説明できない。また、リコネクションとは別に太陽風からの粘性によって磁気圏境界層に流れが作られているが、この流れは遠尾部には達しておらず、地球から数十Reのあたりで磁場の張力によって地球側に引き戻されているようである。
4.ローブのプラズマ 尾部のローブはプラズマ・ベータ値の低い領域であるが、プラズマ密度がかならずしも低いわけではなく、低温だがプラズマシートより密度の高いイオンのビームがしばしば存在する。イオン組成にはプロトンだけでなく電離層起源を示唆する酸素イオンも見られる場合があるが、一方、磁気圏の境界層で観測される場合には太陽風起源を示唆する性質を見せることもある。ローブ・イオンの起源解明は尾部のプラズマの供給機構を理解する上で重要な課題である。ローブとプラズマシートの境界ではそれぞれのプラズマが共存するためイオンや電子は速度分布関数がしばしば非平衡の状態にあり、多様な波動が発生する。GEOTAIL衛星の観測によってこれらの波動の励起や非線形成長の機構についても理解を深めることができた。
5.昼間側の磁気圏境界域 IMFが南向きの時は低緯度の昼間側磁気圏境界域でリコネクションによって加熱・加速されたイオンや電子が観測され、また開いた磁力線にそって太陽風と磁気圏のプラズマが相互に流出・流入している。境界面の速度シア-によって表面波が発生しており、その非線形成長がプラズマの混合に寄与している。IMFが北向きの時には複雑な鋸歯状構造が見られることがあり、その成因を研究中である。
2.南向きのIMFのもとでの構造 IMFが南向きの時には、尾部の磁力線はローブからプラズマシートに向かって運ばれ、磁気中性面上のX型磁気中性線においてふたたびリコネクトする。殆どの場合、X型中性線の位置は地球から150Re以内である。ローブとプラズマシートの境界には「遅いモード」の電磁流体衝撃波が定常的に存在する。衝撃波の内部とその上流におけるイオンの速度分布関数の変化から、エネルギー変換と散逸の機構を読み取ることができる。加速されたイオンのビームが上流側に流出していることも無衝突プラズマ衝撃波の特徴的な性質である。尾部内でのリコネクション過程は磁気圏嵐の際に活発になり、1000km/sにおよぶ高速の磁力線ループ(プラズモイド)が反地球向きに放出される。プラズモイド内のイオンや電子の速度分布関数は、一方向ビーム、双方向ビーム、温度非等方性など加速機構を直接に反映するさまざまな非平衡性を示す。
3.北向きのIMFのもとでの構造 IMFが北向きの時には、磁気中性面は赤道からIMFの方向に大きく傾いており、磁力線はこの傾いた中性面にそって流れる。中性面の北側と南側の速度は正反対の方向を持つため、中性面には100km/sのオーダーの速度シア-がある。流れを駆動しているのは昼間側高緯度カスプ領域におけるリコネクションであると解釈できる。このリコネクションによってできた開いた磁力線は境界面の一方の側から尾部に入り、中性面に沿う流れによって他方の側に運ばれた後、IMFの磁力線に戻って外に出る。しかし、中性面をはさんでプラズマシートの高温イオン・電子が存在する理由はまだ説明できない。また、リコネクションとは別に太陽風からの粘性によって磁気圏境界層に流れが作られているが、この流れは遠尾部には達しておらず、地球から数十Reのあたりで磁場の張力によって地球側に引き戻されているようである。
4.ローブのプラズマ 尾部のローブはプラズマ・ベータ値の低い領域であるが、プラズマ密度がかならずしも低いわけではなく、低温だがプラズマシートより密度の高いイオンのビームがしばしば存在する。イオン組成にはプロトンだけでなく電離層起源を示唆する酸素イオンも見られる場合があるが、一方、磁気圏の境界層で観測される場合には太陽風起源を示唆する性質を見せることもある。ローブ・イオンの起源解明は尾部のプラズマの供給機構を理解する上で重要な課題である。ローブとプラズマシートの境界ではそれぞれのプラズマが共存するためイオンや電子は速度分布関数がしばしば非平衡の状態にあり、多様な波動が発生する。GEOTAIL衛星の観測によってこれらの波動の励起や非線形成長の機構についても理解を深めることができた。
5.昼間側の磁気圏境界域 IMFが南向きの時は低緯度の昼間側磁気圏境界域でリコネクションによって加熱・加速されたイオンや電子が観測され、また開いた磁力線にそって太陽風と磁気圏のプラズマが相互に流出・流入している。境界面の速度シア-によって表面波が発生しており、その非線形成長がプラズマの混合に寄与している。IMFが北向きの時には複雑な鋸歯状構造が見られることがあり、その成因を研究中である。
- ID情報
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- 課題番号 : 04044168
- 体系的課題番号 : JP04044168