論文

査読有り
2021年3月

剣道の動作開始の二者間距離とタイミングは打突と防御の頻度を決定する:鍔ぜり合いからの分かれ方の問題に対する実証データの呈示

武道学研究
  • 鍋山, 隆弘
  • ,
  • 碓氷典涼

53
2
開始ページ
55
終了ページ
71
記述言語
日本語
掲載種別
研究論文(学術雑誌)
出版者・発行元
日本武道学会

本研究では,剣道において動作開始の距離とタイミングの時空間的条件が,攻撃・防御の選択―動作の内容や結果にどのように影響するかを検討した.同時に,鍔迫り合いからの分かれ方の問題に対する実証データを呈示することも目的とした.参加者は日本の大学クラブのトップレベルのプレイヤーであった.実験において参加者は,先に動作を始める先手か,先手の後に動作を始める後手を指定され,150,175,200,225,250,275cmの距離から試合と同様にパフォーマンスをした.我々は選択―動作の2つの頻度を分析した,1つは「能動的な打突の仕かけやすさ」であり,各試行を防御ではなく打突で開始した頻度を示していた.もう1つは「打突のしやすさ」であり,各試行を防御だけで終了するのではなく打突もできた頻度を示していた.結果において,「能動的な打突の仕かけやすさ」「打突のしやすさ」において先手は後手よりも容易であった.両方の結果において,先手と後手の相違が150cmで極めて顕著で,175~250cmでも非常に顕著であり,275cmで相違が消失しかけていた.また,先手は後手よりも打突成功(一本)の合計の頻度も高かった.これらの結果は,動作開始の距離やタイミングが,攻撃・防御の反応時間と運動時間や,先手・後手の選択―動作の有利性の程度を変えることを示していた.なぜなら,選手間の距離が近くなれば,攻撃と防御に必要となり許容される反応時間と運動時間が短くなる.また,先手の能動的な動きは後手の受動的な反応をうみ,攻撃をしかけやすくする.そのため,近い距離では攻撃が簡単になり,防御が困難になり,先手が有利になり,後手が不利になるのである.結論は「150cmから250cmの近い距離にいる場合,攻撃において先手が有利になり後手が不利になる」ということであった.この発見は,剣道のような競技スポーツの選択―動作の教育,そして公正な規則づくりに役立てることができるはずである.

ID情報
  • ISSN : 0287-9700

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