講演・口頭発表等

2012年7月

鳥類の環境毒性学:AHRシグナル伝達系の特徴とダイオキシン類のリスク評価

Journal of Toxicological Sciences
  • 岩田久人
  • ,
  • LEE Jin‐Seon
  • ,
  • LEENA MOL Thuruthippallil
  • ,
  • 久保田彰
  • ,
  • KIM Eun‐Young

記述言語
日本語
会議種別

野生鳥類を対象にした化学物質の生態リスクについては、試料の確保が困難である、作用機序に基づいた毒性試験法が発展途上である、感受性の情報がないなどの理由から、定量的に評価した例はほとんどない。<br> ダイオキシン類の毒性に対する感受性は、実験動物種・系統間で大きく異なる。この感受性の種差を説明する一要因として、各生物種のアリルハイドロカーボン受容体(AHR)の構造的・機能的な差が挙げられている。したがって、ダイオキシン類の生物種特異的な毒性影響や感受性、さらに生態系でのリスクを評価するためには、AHRの遺伝情報や機能への理解が不可欠である。複数の鳥種を対象にした最近の研究では、ダイオキシン類による肝培養細胞でのシトクロムP450(CYP)1A誘導能(EC50)と受精卵への投与による胚の致死率に正の相関関係が認められている。これは、CYP1A誘導に敏感な種ほどダイオキシン類毒性が惹起されやすいことを意味する。しかしながら、鳥類ではAHR-CYP1Aシグナル伝達系の分子的・機能的特性はほとんど知られていない。<br> 我々は、ニワトリ・カワウ・アホウドリなどの野生鳥類を対象に、ダイオキシン類の生態リスクを曝露量と有害性(感受性)をベースにして定量的に解析することを試みた。その過程で、AHR-CYP1Aシグナル伝達系の分子的・機能的特性を明らかにした。さらに、ダイオキシン類曝露に対する種特異的感受性を解析するin vitro試験法を確立することで、生態リスク評価法のモデルケースを構築した。今後AHRの塩基・アミノ酸配列と化学物質との反応を関連付けることができれば、多様な生物種の潜在的な感受性を予測することが可能になるであろう。こうした手法は、多くのインビボ試験を排除することよって費用・時間を減らし、生態リスクの評価や化学物質管理の意思決定を迅速におこなうために必要である。

リンク情報
URL
http://jglobal.jst.go.jp/public/201302280166574428