共同研究・競争的資金等の研究課題

2021年4月 - 2026年3月

西洋中世スコラ学における「倫理学を内在化する政治学」への批判的研究

日本学術振興会  科学研究費助成事業  基盤研究(B)

課題番号
21H00469
体系的課題番号
JP21H00469
配分額
(総額)
17,160,000円
(直接経費)
13,200,000円
(間接経費)
3,960,000円

古代哲学については,プラトンにおける「拡大された正義(国制の正義)」と「小さい正義(個人の魂の正義)」との関係を「類似」ではなく「類推」と捉えることによって,倫理学と政治学との結節点を見出す研究の方向性が提示され,また,新プラトン主義における「家/家族」(個人の倫理的問題と政治的問題との中間)の問題を検討することによって,倫理学と政治学が浸透し合う主題としての「友愛」や「正義」の涵養の場の在り方を精査する着眼点が提起された。
中世については,「政治的なこと」と「市民的なこと」との関係性に関する法学者と哲学者との対立を契機として,法における倫理の内在化を検討する方向性が提示され,また,トマス・アクィナスにおけるカリタス(神愛)論の分析から,特定の共同体に限定されない,世界全体に通底する徳に基づく社会共同体を切り拓く理論的可能性を探求する視点が提起され,さらに,トマス・アクィナスとジャン・ビュリダンにおける学問的知識としての倫理学と政治学の基本的な規定や位置づけの検討に基づいて,どのようなタイプの「倫理学を内在化する政治学」が理論的に構想されているかを探る道が示され,最後に,歴史的な観点からは,ヴァンサン・ド・ボーヴェにおける過去の教父たちのテクストの引用方法,および,写本の広がり方に着目することによって,政治的な統治における倫理や道徳の内在の特性を抽出する着眼点が提起された。
近代については,カントの『永遠平和のために』における法と道徳との関係性をめぐる問題を検討し,「真の政治家とは何か」という問題意識を土台として検討する方向性が提示され,また,ヘーゲルにおいては,伝統的な共同体主義を継承する面が見られる一方で,同時に,各個人の欲求充足を人間の自然本性とする近代的な人間観も保持されており,その両者をいかに整合的に繋ぎうるかという問題提起が行われた。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-21H00469
ID情報
  • 課題番号 : 21H00469
  • 体系的課題番号 : JP21H00469

この研究課題の成果一覧

論文

  4

MISC

  4

書籍等出版物

  1

講演・口頭発表等

  6