2019年4月 - 2022年3月
石刻史料を用いた唐代武官の包括的研究
日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究 若手研究
一般に唐代の墓誌銘には誌主の生前事跡を記した序文がつけられている。その序文には、誌主の官歴が記されることがある。その官歴の事例を収集し唐の中央武官の人的構成をあきらかにするのが本研究の目的である。本年度は、武官史料の収集整理を行う一方で、石刻資料と唐人の詩文集とを補完しあうことで、従来、曖昧であった事柄をより詳細に検討することができた。
墓誌や石碑については、従来知られていた伝世の遺物だけではなく、考古学的発掘による出土物、民間で流通するもの、そして、唐人の文集などに著録された記述がある。近年、注目されるのは、考古学的な発掘や、民間で流通することで新たに見つかる史料であるが、一方で伝世の遺物や文集中の著録も重要である。本年度は、これまでも取り上げられてきた「嵩岳少林寺碑」の碑陰に刻まれた当時の行政文書である「貞観コウ氏県牒」の分析を通して、唐の建国期における軍功と賜田の関係について考察した。その過程で、唐初に寺院に「口分田」が給付されたとの説には再校が必要であろうとの結論に至った。
また、唐の開元21年の対契丹戦の戦勝報告書である「為幽州長史薛楚玉破契丹露布」を分析した。その結果、当時の戦勝報告には軍功に関する虚偽報告が含まれていた可能性が高いことを指摘した。考察の過程で、墓誌史料を利用することで、従来不明であった都督府の位置を比定することができ、武官の人物比定を行うことができた。当時の幽州節度史軍には種々の蕃族が配置されていることをあきらかにした。
墓誌や石碑については、従来知られていた伝世の遺物だけではなく、考古学的発掘による出土物、民間で流通するもの、そして、唐人の文集などに著録された記述がある。近年、注目されるのは、考古学的な発掘や、民間で流通することで新たに見つかる史料であるが、一方で伝世の遺物や文集中の著録も重要である。本年度は、これまでも取り上げられてきた「嵩岳少林寺碑」の碑陰に刻まれた当時の行政文書である「貞観コウ氏県牒」の分析を通して、唐の建国期における軍功と賜田の関係について考察した。その過程で、唐初に寺院に「口分田」が給付されたとの説には再校が必要であろうとの結論に至った。
また、唐の開元21年の対契丹戦の戦勝報告書である「為幽州長史薛楚玉破契丹露布」を分析した。その結果、当時の戦勝報告には軍功に関する虚偽報告が含まれていた可能性が高いことを指摘した。考察の過程で、墓誌史料を利用することで、従来不明であった都督府の位置を比定することができ、武官の人物比定を行うことができた。当時の幽州節度史軍には種々の蕃族が配置されていることをあきらかにした。
- ID情報
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- 課題番号 : 19K13375
- 体系的課題番号 : JP19K13375
この研究課題の成果一覧
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論文
3-
東アジア石刻研究 9 74-92 2022年3月
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氣賀澤保規編『隋唐洛陽と東アジア』法蔵館 115-144 2020年12月
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金子修一先生古稀記念論文集編集委員会 編『金子修一先生古稀記念論文集 東アジアにおける皇帝権力と国際秩序』 367-394 2020年3月
MISC
2-
東洋見聞録 (34) 5-5 2022年8月
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唐代史研究 (23) 91-100 2020年8月
講演・口頭発表等
5-
古文献学国際青年学者研討会 2022年10月29日
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遼金西夏史研究会大会 2022年3月12日 招待有り
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第12回東アジア石刻研究会(於:明治大学、Zoomによるオンライン開催) 2021年3月6日 招待有り
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東洋大学アジア文化研究所2020年度第1回研究例会(Zoomによるオンライン開催) 2020年11月21日
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第11回東アジア石刻研究会 2020年1月11日 招待有り