2018年4月 - 2021年3月
TLR9シグナルによる心臓リモデリングと不整脈発生メカニズムの解明
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
近年、動脈硬化などの基盤として慢性炎症が関与していることが知られており、なかでも病原体センサーとしてのToll-like 受容体(TLR)の関与が示唆されている。心房細動をはじめとする不整脈の基盤としても炎症が関わっているとされているが、詳細は不明のままである。一方で、肥満が独立して心房細動の危険因子となることが報告されているが、そのメカニズムは不明のままである。本研究では、肥満などにおいて増加するcell free DNAが心房・心室におけるTLR9を介してサイトカイン産生や炎症細胞浸潤に寄与し心房細動・心室細動の発症や心内血栓形成に関与するという仮説を立てマウスを用いて検証した。野生型マウスおよびTLR9 KOマウスに対し浸透圧ミニポンプを用いてアンジオテンシンII(AngII)(2mg/kg/日)の持続的投与を4週間施行した。AngII投与群は非投与群に比し有意に血圧上昇がみられたが、TLR9 KOマウスと野生型マウスで有意差は認められなかった。心臓重量体重比も同様にAngII投与により増加していたが、TLR9 KOマウスと野生型マウスで有意差は認められなかった。心エコーによる左室駆出率も、左室拡張末期径に関しても、TLR9 KOマウスと野生型マウスで有意差はみられなかった。病理組織学的検討では、AngII投与群は非投与群に比べSirius Red染色による左房の線維化率が増加していたが、TLR9 KOマウスは野生型マウスに比べ線維化率が有意に抑制されていた。特殊電極カテーテルを頸静脈から挿入し右心房に留置し、電気刺激装置による高頻度ペーシングにて心房細動の誘発を行ったところ、AngII投与群では高頻度に心房細動が誘発されることが確認された。TLR9 KOマウスは野生型マウスに比べ誘発率が抑制されていた。
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- 課題番号 : 18K08077
- 体系的課題番号 : JP18K08077