共同研究・競争的資金等の研究課題

2001年 - 2003年

電子-スピン-格子結合系における電子相制御と光誘起相転移の研究

日本学術振興会  科学研究費助成事業 特別研究員奨励費  特別研究員奨励費

課題番号
01J06386
体系的課題番号
JP01J06386
配分額
(総額)
3,000,000円
(直接経費)
3,000,000円

○スピンパイエルス系有機ラジカル結晶における光誘起反磁性-常磁性転移の探索
有機ラジカル結晶TTTAは、分子が一次元的に積層した構造を有し、スピンパイエルス機構により、低温で分子が二量体化し、常磁性相から反磁性相へ転移する。また、室温付近で巨大な磁気ヒステリシスを示し、メモリーやスイッチグ素子等への応用が期待されている。今年度は、現有のナノ秒パルスレーザと顕微ラマン分光装置を組み合わせたポンプープローブ分光系を構築し、本系における光誘起磁気転移の探索を行った。その結果、臨界温度近傍に位置する室温と11Kの低温領域で、ナノ秒パルスレーザ光照射による、低温相(反磁性)から高温相(常磁性)への劇的な色変化と磁性変化を伴った永続的な相転移現象を見出した。また、この光誘起反磁性-常磁性転移の微視的機構を探るために、相転移効率の励起波長依存性、光伝導、および発光の時間分解測定の実験を行い、観測された光誘起転移がスピンレスな光キャリアの蓄積によるスピンパイエルス不安定性の抑制によって引き起こされていることを明らかにした。(この成果は、Hiroyuki Matsuzaki et al.,Physical Review Letters 91,017403-1-017403-4(2003)に発表。)
○一次元ハロゲン架橋Pd錯体における光誘起CDW-モットハバード絶縁体転移の探索
一次元ハロゲン架橋遷移金属(M)錯体は、M=Niの時はモット絶縁相が、M=Pd、Ptの時はCDW相が基底状態となる。今年度は、光学ギャップが小さく、モットハバード相とCDW相の相境界近傍に位置するPd錯体(Pd(chxn)2Br3)を対象として、現有の反射型フェムト秒ポンププローブ分光法を用いて、光励起によるCDW-モットハバード絶縁体転移の探索を行った。その結果、フェムト秒レーザーパルス照射によって、光励起直後に巨視的なモットハバード状態が過渡的な生成することを明らかにした。この転移は、光励起後、極めて短時間(<140fs)以内に完了した後、数ピコ秒の時間スケールで高速に緩和する。また、この転移においては、一次元鎖の電子状態と強く結合した金属ハロゲン間の伸縮振動モードに起因する超高速コヒーレント振動現象を観測した。ここで得られた特に重要な知見は、転移の初期過程では電子系の応答が支配的で、転移が超高速に起こっている点のほかに、相転移に関連した協同的な電子-格子系のダイナミクスを反映した超高速コヒーレント振動を観測した点であり、今度マルチパルスを用いた相転移の超高速コヒーレント制御等の新しい展開が期待される。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-01J06386
ID情報
  • 課題番号 : 01J06386
  • 体系的課題番号 : JP01J06386