2007年 - 2008年
強相関電子系における光誘起相転移の初期ダイナミクスの解明
日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究(B) 若手研究(B)
光照射によって、物質の電子構造や巨視的物性が変化する現象は、光誘起相転移と呼ばれ、強相関電子系を中心に活発な研究が行われている。本研究では、強相関電子系における光誘起相転移の本質を理解するために、30フェムト秒クラスの高い時間分解能を有するポンプ-プローブ分光測定系を構築し、光誘起相転移の初期ダイナミクスを明らかにすることに目的とする。上記の測定システムを、典型的な強相関電子系物質であるペロフスカイト型マンガン酸化物に適用し、光誘起電荷・軌道秩序相融解の初期過程を詳細に調べた。その結果、電子相関の効果によって、時間分解能(30 fs)以内に、瞬時に秩序相が融解し、これに引き続いて、複数の酸素原子由来のコヒーレント振動が発生することを見出した。特に、軌道秩序の安定化に重要なヤーンテラーモードに由来するコヒーレント振動が、相融解の初期過程で顕著に観測されることを明らかにした。これらは、秩序相の安定化に、隣接サイト間のクーロン反発と軌道秩序が重要な役割を演じていることを示す重要な結果である。
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- 課題番号 : 19740176
- 体系的課題番号 : JP19740176