共同研究・競争的資金等の研究課題

2015年5月 - 2020年3月

メチル水銀毒性発現の分子機構

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(S)  基盤研究(S)

課題番号
15H05714
配分額
(総額)
196,820,000円
(直接経費)
151,400,000円
(間接経費)
45,420,000円

我々はメチル水銀毒性に影響を与える遺伝子を網羅的にスクリーニングした結果、メチル水銀毒性増強作用を有する細胞内因子として転写因子様蛋白質tmRT1を同定し、メチル水銀によってtmRT1を介して合成誘導され細胞外に放出されるTNFαなどの細胞障害性因子が細胞毒性を発揮していることを明らかにした。本研究はこの現象の機構解明を目的としている。
メチル水銀によるTNF-α発現誘導にtmRT1のみならずNF-κBも関わっており、NF-κBの構成因子であるRelBの核内レベルをメチル水銀が増加させることが判明している。RelBはp100と二量体を形成して非古典的NF-κBとして機能するが、本年度は、p100発現抑制によって、RelB発現抑制と同様に、メチル水銀によるTNF-α発現誘導が低下し、核内RelBレベルの増加も抑制されることを明らにした。今後は、欠失変異tmRT1を作製して、tmRT1とRelBの結合様式とその結合がRelBの核内レベルに与える影響を検討する予定である。tmRT1とRelBは共に大脳および小脳に特異的に発現しており肝臓や腎臓にはほとんど発現していないことも判明し、これがメチル水銀による脳選択的なTNF-α発現誘導の主要な機構であると考えられる。また、これまでtmRT1と結合する蛋白質を複数同定してきたが、本年度はメチル水銀によって核内でtmRT1との結合レベルが増加する蛋白質を5種同定することが出来た。今後は、tmRT1/RelBを介したメチル水銀によるTNF-α発現誘導機構におけるそれら結合蛋白質の役割を解析する予定である。さらに、過酸化水素等の酸化ストレス誘導剤がtmRT1の発現を誘導すると共にtmRT1高発現によってこれら酸化ストレス誘導剤の細胞毒性が増強されることが判明し、tmRT1が有する未知機能の1つが示された。

ID情報
  • 課題番号 : 15H05714