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2021年5月8日

熊本大学・発生医学研究所・染色体制御分野 : 精子形態形成に先駆けて減数分裂プログラムの完了に働く新規遺伝子を発見 (YouTube)

  • 石黒啓一郎
  • ,
  • 高田幸

作品分類
Web Service
発表場所
熊本大学・発生医学研究所
DOI
10.1038/s41467-021-23378-4

発生研・染色体制御分野の高田幸助教、小寺千郷(現:本学付属病院・産科婦人科)、竹本一政研究員らのグループは、精子形成において減数分裂のプログラムの終結に必須の働きをする新しい遺伝子を発見しました。この発見により、精子形態形成に先駆けて減数分裂のプログラムが不活性化される仕組みがわかりました。当研究グループでは、以前減数分裂の開始因子MEIOSINを発見した際に、それによって多くの減数分裂関連遺伝子が一斉に活性化されることを明らかにしていました。それらの中には、まだ十分に機能が解明されていない遺伝子が多く残されており、今回、そのうちの一つである「ZFP541」についてより詳細な解析を行いました。
遺伝子の発現パターンの解析からZFP541は減数分裂の終盤から精子形成期の核に出現することが明らかとなりました。次にゲノム編集によりマウスのZFP541遺伝子の働きをなくすと、オスの生殖細胞がいったんは減数分裂を始めるものの、減数第一分裂前期の終盤で死滅して精子がまったく作られず不妊となることが判明しました。
ChIP-seq法と呼ばれる解析により、ZFP541は多くの遺伝子のプロモーターと呼ばれる調節領域に結合していることが明らかになりました。このプロモーターと呼ばれる調節領域上には、アセチル化ヒストンというタンパク質が存在しており、遺伝子発現のON状態を持続させるマークとして働くことが知られています。さらに質量分析法とよばれる解析により、ZFP541は、HDAC1とよばれる酵素とKCTD19というこれまた機能未知の因子と結合することを特定しました。KCTD19もZFP541と同様に精巣で高い発現を示すことや、Kctd19遺伝子を欠損させるとZfp541欠損マウスと同様に減数第一分裂を完了できずに不妊となることが判明し、KCTD19はZFP541と対をなして共に働くことがわかりました。また先行研究から、HDAC1酵素は遺伝子の活発状態のマークとして働くヒストンのアセチル基を取り除くことが知られています。これらの解析結果を総合して、ZFP541は、HDAC1酵素を呼び寄せて遺伝子活性状態のマークであるアセチル基を消去することにより、多くの遺伝子の発現を不活性化させ、減数分裂のプログラムを完了させるというメカニズムが明らかとなりました。

リンク情報
DOI
https://doi.org/10.1038/s41467-021-23378-4
URL
https://www.youtube.com/watch?v=E6AW5WrXKIc
ID情報
  • DOI : 10.1038/s41467-021-23378-4