74歳男。心房細動に対しワルファリンを内服していた。今回、検診で胃体部後壁の早期癌胃癌を指摘後、著者らの施設を受診後、精査より内視鏡的切除は適応外で手術方針となった。所見では上部消化管内視鏡で胃体下部後壁に長径30mmの発赤調の陥凹性病変を確認された。また、生検ではGroup 5(低分化腺癌)で、リンパ節転移や遠隔転移は認められなかった。以上より、本症例は胃体部の早期胃癌と診断され、腹腔鏡補助下幽門側胃切除術(LADG)が行われた。その結果、術後は経過に著変なく2病日目よりワルファリンを再開したが、ベッド上で座位にてテレビをみていてところ突然意識消失の状態となった。頭部CTおよびMRIを行なったところ、左中大脳動脈の閉塞が認められ、脳梗塞と診断、高次救急病院へ搬送となった。意識状態はJCS-200で、痛み刺激に反応せず右共同偏視、失語ならびに右上下肢麻痺が認められた。一方、頭部MRIでは左中大脳動脈領域および後大脳動脈領域に広範な梗塞がみられたほか、頭部MRAでは左中大脳動脈に閉塞も認められた。以後、治療が行われることとなったが、術後急性期のため組織プラスミノーゲンアクチベータ(t-PA)の投与は禁忌で、ヘパリンの全身投与も施行せず、濃グリセリンをはじめ果糖注射液、ステロイド、エダラボンの投与にとどめた。その結果、術後3病日目の頭部CTでは対側の右側に広範な梗塞が認められるも積極的な治療を断念され、患者は術後7病日目に死亡となった。