論文

査読有り
2020年3月

微小部 X 線回析法を用いたヒトエナメル質脱灰表面の結晶学的分析

日大口腔科学
  • 渡辺 新、河野哲朗、戸田みゆき、岡田優一郎、栗田隆史、笹本祐馬、玉村 亮、寒河江登志朗、岡田裕之

46
1
開始ページ
15
終了ページ
21
記述言語
日本語
掲載種別
研究論文(学術雑誌)
出版者・発行元
日本大学口腔科学会

本研究は,ヒトエナメル質が形態学的および物理化学的性質の多様性を示すことに基づき,脱灰による個々のエナメル質の結晶学的変化を明らかにするために,微小部X線回折装置(micro-XRD)を用いて分析を行った。10本の大臼歯を0.5mmの厚さに薄切し,実験群は炭酸飲料水に,対照群は生理食塩水に,7日間浸漬した。得られたサンプルのうち,エナメル質の脱灰が弱いものと強いものから1本ずつ選択し,弱脱灰標本Aと強脱灰標本Bとして,エナメル質の表層および深層に対しX線回折を行った。その結果,新しい知見を得ることができた。今回の実験でも従来の報告と同様に,エナメル質を構成する生体アパタイト結晶格子のa-axis,c-axisの値は,エナメル質の表層および深層,ならびに歯ごとに変化が認められた。このことから,これらの値の差はエナメル質の化学組成が,エナメル質の層ごと,または,歯ごとに異なり,脱灰の進行に影響を与えていることが示唆された。次に,結晶子の大きさ(crystallite size)において,エナメル質の結晶子は実験群と対照群とに著しい差があることが判明した。以上の結果から,エナメル質の結晶学的性質と脱灰の進行との間に,何らかの関係が存在することを見出すことができた。最後に,炭酸飲料水に浸漬したサンプルB表層のXRDパターンから,標準的なハイドロキシアパタイト結晶のXRDパターン以外のピークが認められた。そのピークは,従来報告のない未知の特殊反応生成物のものであると考えられた。本研究が,エナメル質の生体アパタイト構造は歯ごとに差があること,脱灰によってそれらのエナメル質の結晶学的性質が変化し,それらが同一傾向の反応を呈しないことなどを明らかにしたことから,今後は個々のエナメル質のより詳細な研究の必要性が指摘された。これらの結果から,現在すべてのヒトエナメル質に共通して適用されている齲蝕予防方法の再検討の必要性が示唆された。(著者抄録)

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ID情報
  • ISSN : 0385-0145
  • 医中誌Web ID : 2020275307

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