2020年4月 - 2023年3月
認知症早期検出に向けた脳内ネットワーク機能の定量化と歩行変動評価に関する研究
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
昨年度は若年成人を対象に視覚情報を断続的に遮断した時に、歩行パラメータ(歩行速度、歩行率、ステップ長)、脳波筋電図コヒーレンスに与える影響を検討してきた。今年度は対象を地域在住高齢者に変え、昨年と同様な解析を行い、年齢による歩行パラメータ(歩行速度、歩行率、ステップ長)、脳波筋電図コヒーレンスの違いを明らかにした。対象は12名の地域在住高齢者(平均年齢70.6歳)とした。歩行時の視覚情報の遮断条件は、以下の3条件とした。視覚情報の遮断なし(シャッターゴーグル無し)、視覚情報の遮断率30%(duty ratio 30%、以下DR30)、視覚情報の遮断率70%(duty ratio 70%、以下DR70)とした。これらの条件下において、1周20mの8字歩行路を快適歩行速度で10分間の歩行を行い、その際の歩行パラメータ(歩行速度、歩行率、ステップ長)、脳波筋電図コヒーレンスの値を比較検討した。筋電図は右下肢前脛骨筋(以下TA)、脳波はCz部位から導出した。脳波筋電図コヒーレンス(Cz-TA Coherence、以下Cz-TA Coh)は、Welch法によりθ帯域(4-8Hz)、α帯域(8-13Hz)、β帯域(13-30Hz)、γ帯域(30-40Hz)において求めた。その結果、視覚情報の断続的遮断無しに比べ、DR30及びDR70の視覚情報の断続的な遮断において、歩行のパラメータ(歩行速度、歩行率、ステップ長)は有意な変化はなかった。一方、視覚情報の断続的遮断無しに比べ、DR30及びDR70の視覚情報の断続的な遮断時において、β帯域のCz-TA Cohは有意な増加が認められた。この結果は、若年成人の結果と相反する結果となった。高齢者は、視覚情報が断続的に遮断されることによって、脳と下肢筋の連絡をより強め、歩行をコントロールする戦略で歩行の安定化を得て歩行することが示唆された。
- ID情報
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- 課題番号 : 20K11265
- 体系的課題番号 : JP20K11265