2020年4月 - 2025年3月
「奈良朝勅定一切経」の総合的研究ー漢文仏教テクストの資料的基盤の再構築に向けて
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A) 基盤研究(A)
- 課題番号
- 20H00008
- 体系的課題番号
- JP20H00008
- 担当区分
- 研究分担者
- 配分額
-
- (総額)
- 40,170,000円
- (直接経費)
- 30,900,000円
- (間接経費)
- 9,270,000円
研究目的の主要な一つは研究課題にある、個別の奈良朝勅定一切経の経巻を調査することであるが、コロナ禍でその進捗状況は想定以下であった。そのような中で布施美術館蔵の五月一日経を調査し、“いとくら”11号の表紙に掲載しただけでなく、本文テクストについても考察し得たことは大きい。一方、正倉院聖語蔵の五月一日経750巻は初年度から大学図書館所蔵の画像(丸善雄松堂)の閲覧ならびに他の経巻との比較検討が行われてきている。
なかでも令和3年度の特筆事項としては国宝本『金剛場陀羅尼経』(686年書写)と正倉院聖語蔵の当該経典(720年奥書)との比較により紙背に見える「天平十八年」という記録が後世の誤った記載であることが推測できた。本来ならば両本の熟覧調査が必要であることは言を俟たないが、国宝本と正倉院聖語蔵本の調査は容易でない。
加えて、奈良朝勅定一切経データベースの構築が出来てから翻刻や書誌情報を入力していき、その具体的な様相の把握が容易になり、極めて興味深い新知見が得られた。それは正倉院聖語蔵の五月一日経『一切法高王経』には内題下に「備」の一文字が記載され、さらに平安鎌倉写経の金剛寺一切経にも「備」が付されていた。七寺一切経には一文字が無く、かつ五月一日経にある朱字校正の文字群と同じであることが判明し、日本古写経には五月一日経系と五月十一日経系の二系統があることが見えてきた。五月一日経の朱字は林寺正俊論攷(日本古写経善本叢刊第10輯)に依って五月十一日経であることが証明された。今後は聖語蔵の五月一日経750巻すべてと平安鎌倉写経(金剛寺一切経・興聖寺一切経・七寺一切経)と併せ検討する必要性が認められた。この具体的な研究方法論に基づいて二系統の奈良写経のどちらかが平安鎌倉写経に流伝したか検証することが可能となる。
なかでも令和3年度の特筆事項としては国宝本『金剛場陀羅尼経』(686年書写)と正倉院聖語蔵の当該経典(720年奥書)との比較により紙背に見える「天平十八年」という記録が後世の誤った記載であることが推測できた。本来ならば両本の熟覧調査が必要であることは言を俟たないが、国宝本と正倉院聖語蔵本の調査は容易でない。
加えて、奈良朝勅定一切経データベースの構築が出来てから翻刻や書誌情報を入力していき、その具体的な様相の把握が容易になり、極めて興味深い新知見が得られた。それは正倉院聖語蔵の五月一日経『一切法高王経』には内題下に「備」の一文字が記載され、さらに平安鎌倉写経の金剛寺一切経にも「備」が付されていた。七寺一切経には一文字が無く、かつ五月一日経にある朱字校正の文字群と同じであることが判明し、日本古写経には五月一日経系と五月十一日経系の二系統があることが見えてきた。五月一日経の朱字は林寺正俊論攷(日本古写経善本叢刊第10輯)に依って五月十一日経であることが証明された。今後は聖語蔵の五月一日経750巻すべてと平安鎌倉写経(金剛寺一切経・興聖寺一切経・七寺一切経)と併せ検討する必要性が認められた。この具体的な研究方法論に基づいて二系統の奈良写経のどちらかが平安鎌倉写経に流伝したか検証することが可能となる。
- ID情報
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- 課題番号 : 20H00008
- 体系的課題番号 : JP20H00008
この研究課題の成果一覧
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MISC
1-
Diverse Perspectives and Approaches to East Asian Buddhism and Beyond 61-72 2023年8月 招待有り
書籍等出版物
1-
一般社団法人なら文化交流機構 2022年10月9日 (ISBN: 4910895000)
講演・口頭発表等
2-
東方学会令和五年度秋季学術大会シンポジウムⅡ「日本古写経の新たな位置づけ」 2023年11月11日 招待有り
-
International Conference “Diverse Perspectives and Approaches to East Asian Buddhism and Beyond” 2023年6月23日 招待有り