2018年4月 - 2021年3月
新規オートファジーを制御するUlk1のリン酸化解析とその生理的・病理的意義の解明
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
オートファジーは、隔離膜と呼ばれる膜構造で細胞質成分を覆い、オートファゴソームと呼ばれる二重膜に取り囲んだ後に、オートリソソーム内でオルガネラやタンパク質を分解する機構である。酵母を用いた解析によって多くのオートファジー関連タンパク質(Atg)が同定され、オートファジー経路はAtgタンパク質の制御する機構が重要であることが見出されてきた。近年に私の所属研究室において、飢餓で誘導される小胞体由来のAtg5やAtg8/LC3に依存する従来型オートファジーとは全く異なるゴルジ体を起源とした、異なる分子、メカニズムで制御される新規オートファジーが見出された。新規オートファジーの実行分子の多くは、従来型オートファジーと異なっているが、Ulk1に関しては共通に利用されている。しかし、どのように2つのオートファジーの分岐が決定されるかは未知のままであった。また新規オートファジーのマーカー分子の開発は道半ばでありその生理的、病理的役割に関しては充分明らかにされていなかった。本年度、1. 新規オートファジーを誘導した際のUlk1のリン酸化をMS解析し、新規オートファジーに特異的なリン酸化を複数同定した。2. さらにそのリン酸化されるセリン部位をアラニン置換した変異体を恒常的に発現したAtg5/Ulk1ノックアウト細胞株を作製し、オートリソソームの肥大化を指標にして新規オートファジーへの影響を調べた。その結果、ただ1つのセリンのリン酸化が新規オートファジー誘導に必須であることを見出した。3. 同定したリン酸化セリンを認識する抗リン酸化抗体を作製した。この抗体は細胞染色及び免疫沈降実験において十分な結果を得ることができ、細胞染色解析の結果からリン酸化Ulk1はゴルジ体に特異的に局在することがわかった。この抗体染色は新規オートファジーのマーカーとして使用できる可能性が見出された。
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- 課題番号 : 18K06210
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論文
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Nature communications 11(1) 1754-1754 2020年4月9日 査読有り筆頭著者責任著者