研究ブログ

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〈報告〉拙著が国際査読雑誌Textual Practiceの掲載論文で引用されました。

文学研究に関するイギリスの国際査読雑誌Textual Practiceに掲載された論文で、拙著『谷崎潤一郎の世界史――『陰翳礼讃』と20世紀文化交流』(勉誠出版、2023年2月)が引用されました。

著者はUniversity of Warwickの教授マイケル・ガーデナ氏(Professor Michael Gardiner)で、論文のタイトルは「Tanizaki Jun'ichirō's In Praise of Shadows and critical transparency」(⇐このタイトルをクリックするとオンライン版を参照することができます)です。論文冒頭のパラグラフで私の名前を直接挙げて下さっただけでなく、脚注でも複数回拙著に言及していただきました。
この論文のタイトルにある「transparency」とは、いわゆる「透明社会」に関する問題系のことを指しています。日本語で読める関連文献としては、ビョンチョル・ハン『透明社会』(守博紀訳、花伝社、2021年)があります。
上記の論文は、現在ネット上でオンライン版が公開されている状態なのですが、雑誌発行時に改めて論文の内容について本ブログでコメントさせていただければなと考えています。

全く面識もなかった私へ、拙著の刊行直後に世界中の誰よりも早く連絡をくれたのがガーデナ氏でした。
小説のような出会いに心から感謝しています。
Thank you so much Michael !

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〈書評掲載〉拙著の書評が学会誌の『日本近代文学』と『日本文学』に掲載されました。

学会誌の書評欄で、拙著『谷崎潤一郎の世界史――『陰翳礼讃』と20世紀文化交流』(勉誠出版、2023年2月)を取り上げていただきました。

 

◆評者:日高佳紀氏(佛教大学教授)「西村将洋著『谷崎潤一郎の世界史――『陰翳礼讃』と20世紀文化交流――』」日本近代文学会『日本近代文学』(第109集、2023年11月)208-211頁
拙著の内容面に関する紹介のみならず、方法論的な観点についても言及していただき感謝しています。特に最後の一文の「研究のパラダイムをも転換させる衝撃的な著作である」というご評言、励みになります。

 

◆評者:佐藤淳一氏(和洋女子大学准教授)「西村将洋著『谷崎潤一郎の世界史 『陰翳礼讃』と20世紀文化交流』」日本文学協会『日本文学』(第72巻第9号、2023年9月)58-59頁
大部な拙著の内容について細部にわたって丁寧にご紹介いただきました。日本の国外で「新たなコンテクストが生み出されていく文化交流のダイナミズム」という論点は、拙著の全体で特に意識したポイントでした。

 

お二人の書評からは数々の有り難いお言葉をいただくとともに、私自身の今後の課題についても考えさせられました。
本当にありがとうございました。

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【追加文献3】「谷崎潤一郎「陰翳礼讃」関連文献目録1933-2021」

以前、このブログで紹介した拙稿「谷崎潤一郎「陰翳礼讃」関連文献目録1933-2021に、下記の文献2点を追加します。前回のブログで紹介したロシア語版『陰翳礼讃』の翻訳者ミハイル・グリゴーリエフに関する研究文献です。なお「※」以下の部分は追加文献に関する西村のコメントです。

 

==目録「1998年」の項目に追加==
・エレオノーラ・サブリナ「日本におけるロシアのインテリゲンチャ――ミハイル・ペトローヴィチ・グリゴーリエフの生涯と創造(滝波秀子訳『早稲田大学図書館紀要』第45号、1998年3月)

※グリゴーリエフの生涯と翻訳リストからなる研究文献であり、後者のリストでロシア語雑誌『東方評論』創刊号(1939年12月)に掲載された「陰翳礼讃」の書誌的事項が紹介されている。

 

==目録「2017年」の項目に追加==
・長塚英雄編『続・日露異色の群像30――文化・相互理解に尽くした人々(ドラマチック・ロシアin JapanⅣ、生活ジャーナル、2017年12月)
※同書収録の論文、沢田和彦「ミハイル・グリゴーリエフ(1899-1963)グリゴーリエフの生涯と翻訳活動」は、外交文書やロシアで刊行された文献を参照しながら、グリゴーリエフに関する詳細な考察を行っており、ロシア語の雑誌や単行本に収録された「陰翳礼讃」の書誌的事項が紹介されている。

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【追加文献2】「谷崎潤一郎「陰翳礼讃」関連文献目録1933-2021」

以前、このブログで紹介した拙稿「谷崎潤一郎「陰翳礼讃」関連文献目録1933-2021」「2018年」の項目に、下記の文献を追加します。「※」以下の部分が、追加文献に関する西村のコメントです。


==目録「2018年」の項目に追加==

河野至恩ほか編『日本文学の翻訳と流通――近代世界のネットワークへ』(アジア遊学216、勉誠出版、2018年1月)
※同書収録の論文、沢田和彦「ミハイル・グリゴーリエフと満鉄のロシア語出版物」で、1930年代後半から1940年代にかけて発表された「陰翳礼讃」のロシア語訳が紹介されている。具体的には、満鉄が対白系ロシア人宣伝活動の一環として発行した総合雑誌『東方評論』創刊号(1939年12月)と、単行本『日本文化の精神的基礎 論文集』(新京、「東方評論」社、1944年)に、「陰翳礼讃」のロシア語訳が掲載されている。

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なお、戦時下の「陰翳礼讃」翻訳史について補足情報を追記すると、上記の満鉄が発行した雑誌『東方評論』創刊号(1939年12月)にロシア語訳が発表された後、今度は日本の陸海軍と外務省が関与した対外宣伝誌Contemporary Japan(1942年1月)に「陰翳礼讃」の英訳(抄訳)が掲載されています。
後者の英訳については、拙著『谷崎潤一郎の世界史――『陰翳礼讃』と20世紀文化交流』第Ⅲ部第9章「戦後をめぐって」の「60冷戦と美学化」で紹介しています。

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〈紹介掲載〉拙著が『週刊読書人』で紹介されました。

書評新聞『週刊読書人』で、拙著『谷崎潤一郎の世界史――『陰翳礼讃』と20世紀文化交流』(勉誠出版、2023年2月)を紹介していただきました。

◆日比嘉高氏(名古屋大学教授)「日本近現代文学・文化」、『週刊読書人』2023年7月28日、第6面(※「2023年上半期の収穫から」に掲載)

拙著の主題を丁寧にまとめていただいただけでなく、論述の「文体」や「語彙」にも触れて下さり、とても感謝しています。
実は、今回の本を書く際に一番苦労したのが、書き下ろしの長編論文で谷崎を考察するためには、どんな文体と語彙を選択すればよいのか、という問題だったからです。
本当にありがとうございました。

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【追加文献1】「谷崎潤一郎「陰翳礼讃」関連文献目録1933-2021」

以前、このブログで紹介した拙稿「谷崎潤一郎「陰翳礼讃」関連文献目録1933-2021」「2020年」の項目に、下記の文献を追加します。「※」以下の部分が、追加文献に関する西村のコメントです。
==目録「2020年」の項目に追加==

秋草俊一郎『「世界文学」はつくられる1827-2020』(東京大学出版会、2020年6月)
※同書の第Ⅲ部第三章「全集から部分集合へ、さらなるエディションへと」には、アメリカで刊行された世界文学全集についての考察があり、その中で英訳版「陰翳礼讃」に関する書誌情報が紹介されている。具体的には、ノートン社(W. W. Norton & Company)が刊行しているThe Norton Anthology of World Literature(『ノートン版世界文学アンソロジー』)の初版(1995年)から第三版(2012年)までに「陰翳礼讃」の英訳が収録されている。

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なお、谷崎関連の補足情報をさらに追記すると、上記の秋草氏の著書の第Ⅱ部第三章「「世界文学」に翻弄された男」で考察されている、ソヴィエト連邦の東洋学者ニコライ・コンラドは、谷崎と翻訳の問題を考える際にも重要人物の一人です。
この点は、拙著『谷崎潤一郎の世界史――『陰翳礼讃』と20世紀文化交流』の第Ⅱ部第5章「翻訳をめぐって」の特に「31主格の省略」と「32日本語の実験」で考察を加えています。

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〈書評掲載〉拙著の書評が『読売新聞』と『東京新聞』に掲載されました。

一般紙の書評欄で、拙著『谷崎潤一郎の世界史――『陰翳礼讃』と20世紀文化交流』(勉誠出版、2023年2月)を取り上げていただきました。

 

◆苅部直氏(政治学者・東京大学教授)、「谷崎潤一郎の世界史 西村将洋著」、『読売新聞』2023年4月23日、朝刊第13面(※日曜版の書評欄「本よみうり堂」に掲載)
⇒こちらの書評は「読売新聞社オンライン」で全文閲覧が可能です。


◆(無署名)「「谷崎潤一郎の世界史」西村将洋著」、『東京新聞』2023年5月6日、朝刊第11面(※日曜版の書評欄「東京読書会Tokyo Book Club」に掲載)
⇒こちらの書評は、拙著の担当編集者堀郁夫さん(図書出版みぎわ)がTwitterで紹介して下さっています。

どちらの書評でも、拙著の中心的な論点に関して踏み込んだ読解をしていただき、感謝しています。
本当にありがとうございました。

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資料紹介「谷崎潤一郎「陰翳礼讃」関連文献目録1933ー2021」

紀要雑誌『国際文化論集』(西南学院大学)第37巻第2号(2023年3月)に発表した

拙稿「谷崎潤一郎「陰翳礼讃」関連文献目録1933ー2021」

が、機関リポジトリで公開されました。
→詳細はこちらをクリックしてください(機関リポジトリにリンクしています)。

この目録は、拙著『谷崎潤一郎の世界史――『陰翳礼讃』と20世紀文化交流』(勉誠出版、2023年2月)を執筆する際に参照した関連文献を編年体で目録化したものです。文学研究に関する論文や書籍だけでなく、哲学、演劇、映画、建築、あるいは「陰翳礼讃」が掲載された教科書に関するデータなどもまとめています。

なお、その後の調査で「陰翳礼讃」に関しては、さらに増補すべき関連文献も見つかっていますので、機会を見つけて、このブログで追加文献の紹介を行っていこう、と考えています。

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書評:和田敦彦著『「大東亜」の読書編成』について

昭和文学会の学会誌『昭和文学研究』第86集(2023年3月)に、
和田敦彦『「大東亜」の読書編成─思想戦と日本語書物の流通』(ひつじ書房、2022年2月刊行)の書評を執筆しました。

拙稿「書評 和田敦彦著『「大東亜」の読書編成─思想戦と日本語書物の流通』」
 →詳細はこちらをクリックしてください


和田氏の著書に関して、全体的な内容をまとめるとともに、〈具体性〉というキーワードに基づきながら、既存の文学研究に対するスタンスや、批評的な視座、そして現代的な意味の3点を考えてみました。

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新刊『谷崎潤一郎の世界史』について

刊行から少し時間が経過しましたが、新刊『谷崎潤一郎の世界史――『陰翳礼讃』と20世紀文化交流』(勉誠出版、2023年2月)の紹介です。

本書は、谷崎潤一郎の営為を20世紀の文化交流史というテーマのもとで考察した、長編書き下ろし論文です。

堀郁夫さん(図書出版みぎわ)が編集を担当して下さり、とても素敵なデザインの本ができあがりました。谷崎は造本に異常なこだわりを持っていましたが、その意味でも堀さんには大変感謝しています。

以下、谷崎の「装幀漫談」(『読売新聞』1933年6月)から引用します。

私は自分の作品を単行本の形にして出した時に始めてほんたうの自分のもの、真に「創作」が出来上がつたと云ふ気がする。単に内容のみならず、形式と体裁、たとへば装幀、本文の紙質、活字の組み方等、すべてが渾然と融合してひとつの作品を成すのだと考へてゐる」。

本書の具体的な内容としては、(1)日本語作家として谷崎が経験した複数の文化的な葛藤や、(2)谷崎が考えた異文化交流における「文学」の意義、そして(3)本書で〈反復の裂け目〉と名づけた谷崎の重要な創作スタイル、さらに(4)『陰翳礼讃』の表現上の特徴である差異化の思想について考察しています。最終的には、(5)『陰翳礼讃』の差異化という特徴が、『陰翳礼讃』が創り出したグローバルな読書のネットワークにおいても、重要な役割を担っていたことを論じます。

全体は12章に分かれますが、実際には全92節が一続きの論文となっており、各節が迷路のように接続する点が叙述の特徴です。

少し長くなりますが、以下に全92節の内容を記します。

――――――

序論
01ミニチュア・ヒーローズ 02フランス人の偏愛 03転移現象 04日本賛美の彼方へ 05選択 06起源へ 07構成と注意点――本書を読む前に

〈第Ⅰ部 アジア主義からの波動 一九〇〇年代~一九二〇年代〉
第1章 冒頭をめぐって
08冒頭の読み方 09過激なる遅筆 10翻訳が原文に優るとき 11言葉と建築 12梅ノ谷の家
第2章 アジアをめぐって
13征露歌の時代 14起てよ、アジア 15地理と世界認識 16ヒマラヤ山脈と岡倉覚三 17具体性と想像力
第3章 中国体験をめぐって
18「支那趣味」の表現 《参考》「支那趣味」に関する略年表 19文化のダイナミズム 20後藤朝太郎の超国家論 21幻の「支那通」小説
第4章 郭沫若と田漢をめぐって
22国際語としての日本語 23美しき日中交流 24陰翳の系譜学 25憑依する言葉 26誕生 27谷崎とアジア主義

〈第Ⅱ部 ジャポニスムからの波動 一九二〇年代~一九三〇年代〉
第5章 翻訳をめぐって
28猿に関する考察 29一九二〇年代の日仏文化交流 30フランス語版「愛すればこそ」 31主格の省略 32日本語の実験 33模倣の内実
第6章 芥川龍之介をめぐって
34芥川の模倣論 35エレン・フォレスト『雪さん』の日本文学観 36戸川秋骨の翻訳論 37文化宣伝批判 《参考》一九二〇年代中盤の日本文学の翻訳に関する文献リスト 38芥川の軽蔑論 39谷崎とジャポニスム 40『陰翳礼讃』と岡倉覚三 《参考》一九二七年の谷崎と芥川に関する略年表
第7章 建築をめぐって
41エドワード・モースと瓦屋根 42「日本趣味」論争 43ブルーノ・タウトと文章表現 44屋根の幻想性 45実在する文化の拒絶 46写真と比喩 47省略的文体と増殖する叙述 48多元的モダニズム
第8章 夏目漱石をめぐって
49星座的イメージ 50小説『草枕』とジレンマ 51羊羹の語り方 52厠と和辻哲郎 53開化とは何か 54「現代日本の開化」批判 55様々なる開化 56サバルワルとインド独立運動

〈第Ⅲ部 『陰翳礼讃』からの波動 一九三〇年代~一九五〇年代〉
第9章 戦後をめぐって
57読者としての作者 58奴隷の言葉 59『陰翳礼讃』のアメリカ 60冷戦と美学化 61葛藤の痕跡
第10章 戦前をめぐって
62「近代の超克」と中村光夫 63逆襲の漱石 64谷崎と政治 65権力の放置
第11章 サイデンステッカーをめぐって
66日本特集号の役割分担 《参考》『アトランティック・マンスリー』別冊日本特集号(一九五四年)細目 67中島健蔵の「主流」論 68国際的な保守派 69模倣と谷崎文学 70進歩派の読み方 71日本人と排他性
第12章 差別をめぐって
72西欧社会の日本人女性像 73ピエール・ロチ『お菊さん』 74黒人差別とワン・ドロップ・ルール 75中上健次と物語のブタ 76小説『細雪』の桜と鯛 77反復の裂け目 78エドワード・サイードと「野蛮人の土地」 79柄谷行人と「括弧入れ」の美学 80撹乱するイメージ 81心象地理を揺るがす 82カッコ外しの想像力

結論
83私小説的な読み方 84作品本位の読み方 85日本賛美と松子神話 86変化を読む 87ポストモダンの前夜 88建築家チャールズ・ムーアの日本 89ミースとライト 90ヴェルサイユ宮殿と硬い宝石のような炎 91横断する力 92ファースト・ロックダウンの後

――――――

以上です。

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