共同研究・競争的資金等の研究課題

2019年6月 - 2022年3月

在外投票における票買収の実証的研究

日本学術振興会  科学研究費助成事業  挑戦的研究(萌芽)

課題番号
19K21685
体系的課題番号
JP19K21685
配分額
(総額)
6,240,000円
(直接経費)
0円
(間接経費)
0円
資金種別
競争的資金

本研究課題は、在外投票における票買収の実態およびメカニズムについて明らかにすることを目的とする。新興民主主義諸国においては、民主化とともに、国外在住の市民に対する在外投票の権利が拡大された。しかし、民主化して日が浅い国では、概して選挙管理制度が未整備なことが多く、とりわけ国外で実施される在外投票における選挙不正への監視は弱い。こうした状況下、政治家は国外在住の市民の票を買収する動機を抱くことが予想される。本研究は在米メキシコ移民に焦点を合わせ、メキシコの政治家が移民票を動員するメカニズム、および移民に対して票買収を行っている可能性を、サーベイ実験と現地調査により検証する。今年度は、2018年メキシコ連邦選挙における在米移民に対する買票行為についてのサーベイ実験を用いた研究成果をまとめるとともに、越境的な買票行為が生じるメカニズムを探求することに主眼を置いた。具体的に、以下の3点について研究を進めることができた。第1に、サーベイ実験の成果について論文を執筆し、2019年8月のメキシコ政治学会(モンテレイ市開催)、および9月の米国政治学会(APSA)研究大会(ワシントンD.C.開催)で報告し、さらに2020年2月にはカルフォルニア大学サンディエゴ校での比較政治学セミナーて報告を行った。これらの研究報告の機会を通じて得られたコメントをもとに論文を修正し、現在、査読付きの国際英文雑誌に投稿中である。第2に、サーベイ実験にもとづく研究をさらに発展させるため、2019年12月には、メキシコ国内でも重要な移民送り出し地域であるプエブラ州を訪問し、米国への移民経験者およびその家族へ聞き取り調査を行い、どのような経路を通して在外投票への動員が行われているのかを探求した。その結果、在米メキシコ移民組織が、米国の主要都市で移民の利益を集約・代表しつつ、米国、メキシコ政府、メキシコ国内の出身地域の地方政府を含む越境的なネットワークの醸成に重要な役割を果たしていることが明らかになった。第3に、2020年度に、プエブラ州出身の移民が多く居住す、米国のニューヨーク市でメキシコ移民組織、およびメキシコ移民の政治参加について聞き取り調査を行う準備を進めた。この準備には、メキシコの研究者、選挙管理機関の在外投票担当者、プエブラ州政府、移民支援組織メンバーから協力を得ることができた。さらに、ニューヨーク市、およびロサンゼルス市に拠点を置く、主要なメキシコ移民組織の指導者とコンタクトを取り、2020年に実施予定の聞き取り調査への協力体制を築くことができた。研究実績の概要で述べたように、本研究期間の1年目に、これまでの研究成果を複数の国際学会で報告し、さらには査読付き国際英文雑誌に投稿するに至った。また、この過程で残りの研究期間で取り組むべき課題を明確にすることができたため、2020年度に実施予定の調査の準備を順調に進めるに至った。また、本研究課題の重要性について、調査対象国であるメキシコでも理解を得ることができた。具体的に、2019年12月にプエブラ州を調査で訪問した際に、メキシコの全国紙であるMilenio紙からインタビューを受け、研究の意義について幅広く共有する機会に恵まれた。2019年度は、当初の予定通りに研究を進めることができ、さらには2020年度以降の研究計画を遂行するための準備を進めることができた。予定通りに、ニューヨーク市のメキシコ移民コミュニティを訪れ、移民組織指導者および移民の方々に政治参加について聞き取り調査を行うことを予定している。当初、2020年5月上旬に訪問予定であったが、新型コロナウィルス感染拡大により、この時期の調査を延期せざるを得なくなった。想定外の事態であるが、今後、ニューヨーク市、メキシコの調査関係者と連絡を取りつつ、適切な時期を待って、調査の実施を検討する予定である。しかし、ニューヨーク市内の中でも、特にメキシコ移民コミュニティは、新型コロナウィルス感染拡大による大きな影響を受けている。よって、先方の事情を最優先に考えつつ、研究計画・方法を変更することも視野に入れている

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-19K21685
ID情報
  • 課題番号 : 19K21685
  • 体系的課題番号 : JP19K21685