2000年10月1日
底生有孔虫から推定される過去2万年間の親潮域における海洋環境
第四紀研究
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- 巻
- 39
- 号
- 5
- 開始ページ
- 427
- 終了ページ
- 438
- 記述言語
- 日本語
- 掲載種別
- DOI
- 10.4116/jaqua.39.427
- 出版者・発行元
- 日本第四紀学会
2本の海底コア中の底生有孔虫群集に基づいて,過去約2万年間の親潮域における海洋環境を推定した.襟裳岬沖のST-5コア(水深2,098m)および釧路沖のST-21コア(水深1,083m)の底生有孔虫群集は,いずれも最終氷期から完新世への過渡期に著しい変化を示す.ST-5コアの最終氷期の群集が,現在の黒潮-親潮混合水域における水深2,000m付近のそれと類似することから,襟裳岬沖の深層水は最終氷期から現在まで変化しなかったと考えられる.しかし,完新世には海洋表層の生物生産が高くなったため,海底で有孔虫殻の選択的溶解が起こり,完新世の群集組成は大きく変化したと判断される.一方,ST-21コアの最終氷期の群集で<i>Epistominella pacifica</i>が優勢であることから,釧路沖の水深1,000m付近では北方起源の中層水の影響が最終氷期に強かったと示唆される.しかし,完新世前期には現在に近い低酸素で栄養塩に富んだ親潮中層水が成立し,中期に溶存酸素量は一時的に上昇するものの,後期になると再び低酸素で栄養塩に富んだ中層環境が存在したと推定される.
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