論文

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2019年

なぜ非行集団に同一化するのか ――集団間関係に基づく検討――

心理学研究
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  • 中川知宏

90
3
開始ページ
252
終了ページ
262
記述言語
日本語
掲載種別
研究論文(学術雑誌)

本研究の目的は,なぜ非行集団に同一化するのかということを集団間関係の観点から検討することである。具体的には,非行集団に対する差別が集団同一化に及ぼす効果は集団境界透過性によって調整されるだろうと仮説を立てた。調査は少年鑑別所に入所中の少年96名を対象に実施した。分散分析の結果,非行集団に対する差別と集団境界透過性の交互作用が有意であり,教師または警察から差別的な扱いを受けていると知覚した場合,非行集団以外に集団関係を持てない少年はそうでない少年に比べて認知的同一化を強く示した。これはわれわれの仮説を支持するものであったが,他の交互作用は非有意であった。一方,情緒的同一化については,同級生からの差別と集団境界透過性の交互作用のみが見られたが,これは仮説を支持するものではなかった。したがって全体的に,本研究の結果は仮説を支持するものではなかったといえるだろう。しかし,一部の結果は警察や教師から差別を受けていると感じていたとしても,非行集団の他に付き合える仲間がいることで非行集団への認知的同一化を低減することが可能であることを示している。

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