講演・口頭発表等

国際会議
2010年9月

北海道日本海側に来遊するゴマフアザラシ(Phoca largha)の個体数変動パターン

日本哺乳類学会2010年大会
  • 加藤美緒
  • ,
  • 河野康雄
  • ,
  • 伊東幸
  • ,
  • 小林万里

記述言語
日本語
会議種別
口頭発表(一般)

近年、北海道周辺海域に来遊するゴマフアザラシ(Phoca largha)の個体数は激増し、生息海域を南下・拡大、上陸場も増加している。これに伴って、上陸場周辺海域における漁業被害が深刻化しており、早急な対策が求められているが、彼らが日本海側にいつ頃来遊し始め、各地域でどのような個体数変動パターンを示すのかは明らかではない。
そのため本研究では、北海道日本海側の主な上陸場である抜海港と焼尻島に注目し、彼らの来遊時期や個体数の季節変動を比較することで、2地域の個体数変動パターンの特徴、来遊時期や退去時期の条件を明らかにすることを目的とした。
2003年から2009年(主に10月~翌年4月)に調査された、抜海港と焼尻島の各地域における日毎の午前9時付近のゴマフアザラシの個体数データと、観測時間帯の水温データを用いて分析を行った。
その結果、来遊開始時期、個体数ピーク時期、退去時期ともに差異が見られ、2地域の個体数変動パターンの違いが明らかになった。抜海港は一度、焼尻島は二度の個体数ピーク時期があり、来遊開始時期と退去時期には2地域で半月ほどのずれが見られた。しかし、来遊開始時期・個体数ピーク時期・退去時期の平均水温は2地域でほぼ一致していた。これは、ゴマフアザラシの餌生物が水温に依存しており、アザラシは餌が豊富な海域周辺の上陸場を選択しているため、各時期の水温一致が見られたと考えられた。また、2地域とも来遊開始時期と退去時期の月平均個体数が年々増加傾向にあったことから、来遊開始時期の早期化、退去時期の遅延化が起きている可能性が示唆された。また、抜海港の年平均個体数は年々増加傾向にあったものの、焼尻島は2006年以降あまり変動がなかった。さらに、抜海港は2007年から2008年にかけて個体数の増加率が高くなっていた。焼尻島の上陸場の大きさを考慮すると、2006年には焼尻島の上陸場を利用可能な個体数が限界に達し、焼尻島に上陸できない個体が抜海港に移動したため個体数の増加率が高くなったものと考えられた。