講演・口頭発表等

国際会議
2010年9月

北海道東部厚岸湾内の小定置網周辺におけるゼニガタアザラシの行動

日本哺乳類学会2010年大会
  • 小林由美
  • ,
  • 小林万里
  • ,
  • 渡邊有希子
  • ,
  • 桜井泰憲

記述言語
日本語
会議種別
口頭発表(一般)

北海道東部厚岸湾内では,3-5月の刺し網・小定置網漁を中心としてゼニガタアザラシによる漁獲物の食害(漁業被害)が問題になっている.そこで本研究では,被害軽減策を検討するために,小定置網周辺においてバイオテレメトリー法によるゼニガタアザラシの行動追跡を行い,個体の出現記録と定置網の漁獲量や操業の有無,及び気象海象などの外部環境要因との関係を明らかにすることを目的とした.
2009年4月に,生体捕獲したゼニガタアザラシの成獣2頭について,超音波発信機(VEMCO社製,Canada,V16P-5H,平均発信間隔20秒)を接着剤(Loctite401)を用いて装着し,放獣した.設置型受信機(VEMCO社製,Canada,VR2W,受信範囲半径約300m)1個を小定置網に設置した.
No.1(メス)では,4月6日から4月22日までの17日間に1,368回,No.2(オス)では,4月6日から5月8日までの33日間に871回受信があった.出現確率(出現日/調査期間)は,調査期間全体ではNo.1が16.7%,No.2が41.5%,4月ではそれぞれ26.9%,52.0%,そして5月では0.0%,25.0%であり,両個体ともに定置網内で採食するために繰り返して定置網周辺に出現していると判断された.成獣メスは,出産・育児期になり上陸場周辺で過ごす時間が長くなったために,4月下旬から網場周辺に出現しなかったと推察された.両個体とも,潮の干満の差が大きい日の高潮時に漁場周辺に出現することが多かった.本種は一般的に,日中の干潮時に上陸場に上陸して休息し,潮が満ちて上陸場スペースが小さくなると降海して採食するため,これに一致した日周行動をとっていると推察された.毎日のアザラシの出現の有無及び滞在時間合計は,同定置網の総漁獲量とは関係がなかった.両個体ともに,調査期間を通して操業時間帯である午前4-7時は網場周辺に全く出現していなかったことから,漁船を避けていると推察された.なお,本研究は,環境省(H19-21年度)ゼニガタアザラシ共存構築モデル事業による.