共同研究・競争的資金等の研究課題

2019年4月 - 2024年3月

ケアの倫理による近現代政治理論の「主体性」概念の再検討

日本学術振興会  科学研究費補助金  基盤研究(C)

課題番号
19K01484
体系的課題番号
JP19K01484
担当区分
研究代表者
配分額
(総額)
3,250,000円
(直接経費)
2,500,000円
(間接経費)
750,000円
資金種別
競争的資金

当初、本研究計画では、前半において「ケアの倫理」(Care Ethics)に関する研究を主として行い、そこで得られた知見を元にして後半では近代リベラル・デモクラシー理論や現代市民社会の「主体性」(subjectivity)概念の批判的考察を行う予定であった。しかし、新型コロナウイルス感染症の流行下での各種の制限により、前半のプロセスが大幅に遅延することになり、結果的に後半のプロセスへの取りかかりも遅れることとなった。2021年度においては、当初予定していたアメリカ政治学会への参加、国内外の研究者との直接的な交流は一切かなわず、著作・文献を通した研究が主となった。
そのような状況においても、一定の知見を獲得することはできた。それは、従来対立的に理解されてきた「正義」と「ケア」だが、それらは一体化できるという可能性である。「ケアの倫理」は「正義」と「ケア」を対立的に把握したキャロル・ギリガンの研究を起点としており、思想的な幅が広がった今日においてもその影響は大きい。そのため、本研究の初期においても、近現代政治理論は「自立的・自律的・理性的市民」という人間像に基づくものだとして批判的に考察を行っていた。しかし、そのような近現代政治理論理解は西洋思想における人間像の一側面を強調したものに過ぎず、近代においても他者との有機的な関係の中で人間像の構築を試みる動きが存在していたことがわかった(ガブリエル・マルセル等)。つまり、近代の人間像においても、「脆弱性」(vulnerability)の存在を前提として、他者との相互依存的な関係性の中で人間像が形成しようとする試みが存在していたことがわかった。この知見は、近現代政治理論における「主体性」概念の再検討という本研究計画の大目標を実現する上でも重要なものになると考える。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-19K01484
ID情報
  • 課題番号 : 19K01484
  • 体系的課題番号 : JP19K01484