共同研究・競争的資金等の研究課題

2018年4月 - 2021年3月

債権法改正が金融実務に与える影響に関する日仏比較法研究


配分額
(総額)
3,120,000円
(直接経費)
0円
(間接経費)
0円
資金種別
競争的資金

2019年度は,日仏両国における債権法(債務法)改正の調査・分析を行うため,引き続き文献の収集に努めるとともに,債権譲渡およびセキュリティ・エージェントに関する分析・検討を行った。①債権譲渡に関する研究成果は次のとおりである。a.将来債権譲渡に関して,日仏の法改正を比較する論文を執筆した。そこでは,フランスでも日本と同様に将来債権譲渡を認める規定が新設されたところ,日本法と比べると,特定可能性の要件が明文で示されていること,債権の移転時期が発生時と明記されていることなどの相違点があることを指摘した。また,とりわけ後者に関しては,倒産手続における将来債権譲渡の処遇にも影響を及ぼしうるものであって,この問題が未解決のままであるわが国の立法にも示唆を与えうることを指摘した。b.債権譲渡を用いた担保に関するフランス人研究者(セヴリーヌ・カブリヤック)の報告原稿を翻訳した。c.さらに,譲渡制限特約に関して,2018年度に日仏研究者の共同コロークにおいて行った報告をもとに,フランス語で成果をまとめた。②セキュリティ・エージェントに関しては,信託によってこれを可能とするフランスの2016年の法改正を紹介した。そのうえで,連帯債権の規定の新設によって同様の制度の利用を可能にしようとした日本の債権法改正との比較を行った。①の成果については,2019年度に刊行された論文集・大学紀要において公表済みである。また,②の成果についても学会誌においてすでに公表されている。2019年度は,これまで続けてきた債権譲渡に関する研究をさらに深めつつ,本課題に即した研究成果をさらに挙げることができたと考える。他方,2019年度も前年度に引き続いて所属研究機関・部局の役職を担うことになり,研究に割くことができる時間を十分に確保することが難しかった。また,新型コロナウィルス感染症の影響により,予定していたフランスでの現地調査を2019年度も行うことができなかった。今後,新型コロナウィルス感染症が本課題の遂行に与えうる影響は現時点では見通せないが,2020年度は可能な限りフランスでの現地調査を実現させたいと考えている。2020年度以降も,当初の研究計画に沿いつつ,次のとおり本課題の研究を推進していく予定である。2019年度までで債権譲渡に関する研究はひとまず完結したと思われるので,2020年度は,さらに相殺や詐害行為取消権などの諸制度についても日仏両国の債権法(債務法)改正を比較・検討していく。また,本課題は,日仏両国における法改正が金融実務に与える影響を検討の対象とするところ,日仏いずれの国においても,担保法の改正準備作業が目下進行中である。そこで,本課題でも,研究の素材とすべき対象を広げ,これらの改正の動向についても検討を加えていく予定にしている