西川 義文

J-GLOBALへ         更新日: 18/12/14 11:47
 
アバター
研究者氏名
西川 義文
 
ニシカワ ヨシフミ
eメール
nisikawaobihiro.ac.jp
URL
https://sites.google.com/site/nishihdlab/
所属
帯広畜産大学
部署
原虫病研究センター 生体防御学分野
職名
教授
学位
博士(農学)(東京大学大学院農学生命科学研究科)
科研費研究者番号
90431395

プロフィール

【研究テーマ】
1. 原虫病をコントロールするワクチンを開発する!
 原虫とは癌細胞と同様に単一の真核細胞で構成され、動物体内で無限に増殖する感染病原体のことを指します。医学分野で重要なマラリア原虫は、世界で年間3~5億人が罹患、年間200万人もの命を奪っています。わが国にも存在するトキソプラズマはその感染による流産や新生児の先天性トキソプラズマ症を引き起こし、少子化が進む現代社会には無視できない問題です。また畜産業界では、家畜原虫感染症による家畜の生産性の低下が問題視され、ネオスポラの感染による牛の流産例が全国的に見つかっており、被害の拡大が懸念されています。多くの研究者が原虫の増殖を不活化できる中和抗体(Th2免疫)誘導型ワクチンの開発を試みましたが、病原性原虫がもつ独自の抗原変異機構(Th2免疫からの免疫回避機構)に阻まれてその実現には至っていません。
 近年の研究により、マラリア原虫は赤血球内に寄生し、免疫複合体の形成や脾臓内のマクロファージなどによる貪食作用により宿主の防御機構が働くこと、トキソプラズマやネオスポラはマクロファージを含む様々な細胞内に寄生し、Th2免疫と共にマクロファージのT細胞依存性活性化等のTh1免疫が重要な排除エフェクターとなることが明らかにされています。従って、“如何にして原虫に特異的なTh1免疫を強力に誘導できるか”が直面する次の重要研究課題であると考えます。すなわち、抗原変異に影響を受けないTh1免疫を人為的に誘導できる技術シーズこそが原虫ワクチンの開発を成功させる鍵を握っているのです。私たちは、ワクチン抗原を封入した多機能性リポソームを作製し、これら原虫病に対するワクチン開発を進めています。

2. トキソプラズマ感染による動物の行動変化(原虫はエイリアン?)
 トキソプラズマ感染による宿主の行動の変化は以前から知られており、この行動変化がトキソプラズマの生活環を活性化しているという推測は興味深いと思われます。迷路学習の実験モデルで、トキソプラズマ感染マウスは学習能力や記憶に劣ることが示されました。さらに、感染マウスは未知のものに対する警戒感が希薄となり、ネコの匂いにも鈍感になります。感染マウスあるいはラットのこのような行動変化は、補食動物であるネコから逃げるのには致命的でありますが、原虫側から見ればより効率的に終宿主に到達できることになります。
 トキソプラズマ感染によるヒトの行動変化の研究も歴史があります。トキソプラズマに感染している人は、統合失調症、性格の変化、交通事故のリスク増加に関与しているという報告もあります。男女間で多少の差はあるものの、精神運動に支障をきたし、不安な状態になりやすく、幻覚、認知障害などを示す場合もあります。
 トキソプラズマ感染による宿主動物の行動変化に関するメカニズムについては一定の見解が示されているものの、その多くは謎のままです。私たちは脳内に寄生する原虫に着目し、宿主の行動変化を引起すメカニズムの解明と生態系に与える影響に関する研究を進めています。

3. 細胞内寄生性原虫の感染ダイナミクス
 宿主細胞寄生性の原虫は、宿主の増殖メカニズムを巧みに利用することにより生存する事が可能です。トキソプラズマ原虫は様々な有核哺乳動物細胞に能動的に侵入し、宿主の免疫機構からの逃避と宿主細胞から栄養物質の強奪を行うために寄生胞を形成します。
 これまでに、宿主細胞への接着や侵入に関わる原虫側の因子が研究され、MIC、ROP、GRAなど数多くの分泌蛋白質の存在が明らかにされてきました。私たちは、この感染ダイナミクスを詳細に解明するために、新規原虫由来因子の探索を進めています。
 また、トキソプラズマ原虫が宿主細胞の栄養物資を取り込む機構としては、宿主細胞がLDL受容体依存的に取り込んだコレステロールを原虫自身の生存に利用していることが報告されています。しかしながら、トキソプラズマ原虫の感染に関与する宿主細胞由来の分子、あるいは宿主細胞のタンパク質や遺伝子と相互作用する原虫由来の分子については不明な部分が多いのが現状です。私たちは、原虫の持つ宿主の栄養を強奪するメカニズムの解明を進めています。
 トキソプラズマ原虫が感染した宿主細胞は、原虫自身が宿主細胞で分裂・増殖するために宿主のシグナル伝達経路を巧みに変化させ、宿主側のストレス応答に対して抵抗性になります。さらに、原虫にとって有害な免疫担当細胞を自殺に追い込む機構が存在すと考えています。私たちは、原虫のストレス回避機構の研究を進めています。 これまでに、トキソプラズマ由来の免疫活性化分子を同定し、トキソプラズマの生存戦略への関与を明らかにしてきました。

4. 流産メカニズムと病原性因子
 ネオスポラ原虫は 、牛に流産、死産或いは子牛の神経症状を主徴とする異常産を高率に引き起こします。 私たちは、この原虫の垂直感染マウスモデルを確立し、母子免疫の基礎的な研究を展開しています。また、生化学的アプローチによるネオスポラ原虫の持つ病原性因子の探索も進めています。

5. 社会実装可能な感染症診断システムの開発
 フィールドでの診断・疫学調査に適応可能な診断システムの開発を進めています。現場(農場、臨床獣医師、家畜保険衛生所)と連携し、社会実装可能な感染症診断システムを現場へ提供することで、日本をはじめ世界のネオスポラ、トキソプラズマ、クリプトスポリジウムの汚染状況の把握と、対策提言を行っています。

6. 生物資源からの有用物質の発見
 原虫は、ウイルスや細菌と比較して極めて複雑な生活様式を持っています。さらに、宿主由来のストレス反応を巧妙に制御する原虫の生存戦略は、薬剤やワクチンの開発を困難にさせています。私たちは、原虫の持つ生存戦略に着目し、原虫ライブラリーから新規の生理活性物資のスクリーニングを行っています。また、海洋生物や微生物の持つ天然物化合物からも有用物質の同定を進めています。これら物質を利用して、ヒトや動物を対象とした疾患治療への応用を目指しています。

研究分野

 
 

経歴

 
2018年4月
 - 
現在
帯広畜産大学 原虫病研究センター 教授
 
2007年4月
 - 
2018年3月
帯広畜産大学 原虫病研究センター 准教授
 
2005年12月
 - 
2007年3月
帯広畜産大学 原虫病研究センター 助教授
 
2003年4月
 - 
2005年11月
東レ株式会社 先端融合研究所 研究員
 
2001年11月
 - 
2003年3月
エール大学 医学部 日本学術振興会特別研究員(PD)
 

学歴

 
1998年4月
 - 
2001年3月
東京大学大学院 農学生命科学研究科 応用動物科学専攻博士課程
 
1996年4月
 - 
1998年3月
東京大学大学院 農学生命科学研究科 応用動物科学専攻修士課程
 

委員歴

 
2017年9月
 - 
現在
日本獣医寄生虫学会  渉外・広報担当理事
 
2015年4月
 - 
2017年8月
日本獣医学会寄生虫分科会  会計監査
 
2013年4月
 - 
現在
日本寄生虫学会  評議委員
 
2012年4月
 - 
現在
日本獣医学会  評議委員
 
2011年1月
 - 
現在
分子寄生虫学ワークショップ  世話人
 

受賞

 
2016年9月
日本獣医学会 日本獣医学会賞 ネオスポラ症の病態発生機序と防御法に関する研究
 
2010年5月
日本寄生虫学会 奨励賞 トキソプラズマ由来分子と一酸化窒素による原虫のステージ変換と宿主細胞アポトーシスの誘導
 
2001年10月
日本獣医学会 獣医学奨励賞 Neospora caninum表面タンパクNcSRS2の性状解析及び診断系とワクチン開発への応用
 

論文

 
Abdelbaky HH, Fereig RM, Nishikawa Y
Parasitology international   67(6) 675-678   2018年12月   [査読有り]
Masatani T, Fereig RM, Otomaru K, Ishikawa S, Kojima I, Hobo S, Nishikawa Y
Parasitology international   67(6) 763-767   2018年12月   [査読有り]
Nishimura M, Goyama T, Tomikawa S, Fereig RM, El-Alfy EN, Nagamune K, Kobayashi Y, Nishikawa Y
Parasitology international   68(1) 79-86   2018年10月   [査読有り]
Ichikawa-Seki M, Fereig RM, Masatani T, Kinami A, Takahashi Y, Kida K, Nishikawa Y
Parasitology international      2018年10月   [査読有り]
Bando H, Lee Y, Sakaguchi N, Pradipta A, Ma JS, Tanaka S, Cai Y, Liu J, Shen J, Nishikawa Y, Sasai M, Yamamoto M
mBio   9(5)    2018年10月   [査読有り]
Fereig RM, Abdelbaky HH, Ihara F, Nishikawa Y
Acta tropica   185 349-356   2018年9月   [査読有り]
Nishikawa Y, Shimoda N, Fereig RM, Moritaka T, Umeda K, Nishimura M, Ihara F, Kobayashi K, Himori Y, Suzuki Y, Furuoka H
Applied and environmental microbiology   84(18)    2018年9月   [査読有り]
Uesaka K, Koyama K, Horiuchi N, Kobayashi Y, Nishikawa Y, Inokuma H
The Journal of veterinary medical science   80(2) 280-283   2018年2月   [査読有り]
Bando H, Sakaguchi N, Lee Y, Pradipta A, Ma JS, Tanaka S, Lai DH, Liu J, Lun ZR, Nishikawa Y, Sasai M, Yamamoto M
Frontiers in immunology   9 2073   2018年   [査読有り]
Tuda J, Adiani S, Ichikawa-Seki M, Umeda K, Nishikawa Y
Parasitology international   66(5) 615-618   2017年10月   [査読有り]
Nishimura M, Umeda K, Suwa M, Furuoka H, Nishikawa Y
Infection and immunity   85(9)    2017年9月   [査読有り]
Nishikawa Y
The Journal of veterinary medical science   79(8) 1374-1380   2017年8月   [査読有り]
Leesombun A, Boonmasawai S, Nishikawa Y
Parasitology international   66(3) 219-226   2017年6月   [査読有り]
Kamyingkird K, Cao S, Tuvshintulga B, Salama A, Mousa AA, Efstratiou A, Nishikawa Y, Yokoyama N, Igarashi I, Xuan X
Experimental parasitology   176 59-65   2017年5月   [査読有り]
Guswanto A, Allamanda P, Mariamah ES, Munkjargal T, Tuvshintulga B, Takemae H, Sivakumar T, AbouLaila M, Terkawi MA, Ichikawa-Seki M, Nishikawa Y, Yokoyama N, Igarashi I
Veterinary parasitology   239 76-79   2017年5月   [査読有り]
Mahmoud ME, Fereig R, Nishikawa Y
Infection and immunity   85(4)    2017年4月   [査読有り]
Zhou M, Cao S, Sevinc F, Sevinc M, Ceylan O, Liu M, Wang G, Moumouni PF, Jirapattharasate C, Suzuki H, Nishikawa Y, Xuan X
The Journal of veterinary medical science   78(12) 1877-1881   2017年1月   [査読有り]
Fereig RM, Mohamed SGA, Mahmoud HYAH, AbouLaila MR, Guswanto A, Nguyen TT, Ahmed Mohamed AE, Inoue N, Igarashi I, Nishikawa Y
Ticks and tick-borne diseases   8(1) 125-131   2017年1月   [査読有り]
Fereig RM, Kuroda Y, Terkawi MA, Mahmoud ME, Nishikawa Y
PloS one   12(4) e0176324   2017年   [査読有り]
Mousa AA, Roche DB, Terkawi MA, Kameyama K, Kamyingkird K, Vudriko P, Salama A, Cao S, Orabi S, Khalifa H, Ahmed M, Attia M, Elkirdasy A, Nishikawa Y, Xuan X, Cornillot E
PloS one   12(10) e0185372   2017年   [査読有り]

書籍等出版物

 
寄生虫病学(改訂版)
西川 義文
緑書房   2017年3月   
グローバル感染症最前線—NTDsの先へ—
西川義文、猪原史成 (担当:共著, 範囲:グローバル感染症トキソプラズマ─トキソプラズマ感染が環境と人間活動に及ぼす影響は?)
医学のあゆみ、医歯薬出版   2016年11月   
消化管感染症の発症メカニズム
西川 義文
化学療法の領域、医薬ジャーナル社   2016年9月   
Vaccine Design: Methods and Protocols
Fereig RM, Nishikawa Y (担当:共著, 範囲:Towards a Preventive Strategy for Toxoplasmosis: Current Trends, Challenges, and Future Perspectives for Vaccine Development.)
Humana Press   2016年5月   ISBN:10.1007/978-1-4939-3389-1_10
改訂獣医生化学
西川 義文
朝倉書店   2016年4月   

競争的資金等の研究課題

 
家畜病原性原虫ネオスポラの感染による流産発症機構の解明
文部科学省: 科学研究費補助金・基盤研究B(一般)
研究期間: 2018年4月 - 2021年3月    代表者: 西川 義文
先天性トキソプラズマ症発症機序の解明と新規治療法の確立に向けた基盤研究
寿原記念財団: 第32回研究助成金
研究期間: 2018年4月 - 2019年3月    代表者: 西川 義文
脳内寄生虫トキソプラズマの感染による記憶改変メカニズムの解明
文部科学省: 科学研究費補助金・挑戦的研究(萌芽)
研究期間: 2017年4月 - 2019年3月    代表者: 西川 義文
ネオスポラ感染に対する社会実装可能な診断方法の開発
科学技術振興機構: 地域産学バリュープログラム
研究期間: 2017年12月 - 2018年11月    代表者: 西川 義文
食肉家畜における原虫感染症の血清診断法の開発と血清疫学的研究
伊藤記念財団: 平成29年度研究助成
研究期間: 2017年 - 2018年3月    代表者: 西川 義文
ネオスポラ病原性因子の同定とワクチン開発への応用
文部科学省: 科学研究費補助金・基盤研究(B)(一般)
研究期間: 2015年4月 - 2018年3月    代表者: 西川 義文
宿主中枢神経系を支配するトキソプラズマ由来ブレインマニピュレーターの解明
文部科学省: 科学研究費補助金・挑戦的萌芽研究
研究期間: 2015年4月 - 2017年3月    代表者: 西川 義文
インドネシアにおける人獣共通原虫病の疫学調査と社会実装可能な診断方法の開発
文部科学省: 科学研究費補助金・基盤研究(B)(海外学術調査)
研究期間: 2014年4月 - 2017年3月    代表者: 西川 義文
トキソプラズマ感染による宿主ハイジャック機構の解明
帯広畜産大学: 学長裁量経費「プロジェクト研究費」学術研究助成プロジェクト
研究期間: 2015年 - 2016年3月    代表者: 西川 義文
トキソプラズマ感染による宿主ハイジャック機構の解明
帯広畜産大学: 学長裁量経費「プロジェクト研究費」学術研究助成プロジェクト
研究期間: 2014年 - 2015年3月    代表者: 西川 義文