論文

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2016年3月

日韓王陵級古墳における墳丘の特質と評価

日韓文化財論集Ⅲ
  • 青木 敬

開始ページ
1
終了ページ
29
記述言語
日本語
掲載種別
研究論文(大学,研究機関等紀要)

本稿では、新羅およびその周辺地域における古墳の墳丘を分析し、日本列島の古墳との比較検討をおこなう。分析手法としては、対象とする例の墳丘形状が、楕円形あるいは正円形のいずれを指向するのか指数を用いて数値を算出する。さらに、墳丘長に対する墳丘高の割合を示すため、こちらも指数を用いる。導出した指数をもとに出現年代や地域性などを把握する。<br />
分析の結果、対象地域では墳丘が楕円から正円へと変化することを把握し、それが竪穴系埋葬施設から横穴系埋葬施設へ転換する時期と軌を一にすることをあきらかにした。その理由として、竪穴系埋葬施設を有する古墳では、埋葬施設形状に沿って腰高に被覆することが、墳丘の第一義的役割だったためと考えた。その後、横穴式石室の採用が墳丘周囲の整備を誘引し、墳丘外表に基壇外装状の表飾をおこない、そこへ十二支像をはじめとしたレリーフを設置する、その設置には方位や正確な割り付けが不可欠なため、結果として整美な円丘を構築する。こうした点が墳丘正円化の契機と解した。<br />
また新羅では、北魏における高大化した皇帝陵の築造再開を契機に、すくなくとも5世紀後半から新羅式高塚として高大化した墳丘を築造し、横穴系へと埋葬施設が変化しても継続する。そして墳丘の高大化は、中国北朝に端を発するもので、北朝の影響が漸次新羅から日本列島へと波及していったと考えた。5世紀後半以降、墳丘は高大化といういわば中国的な墳墓形態を採用し、東アジアの動向をふまえると、権力の所在を顕在化させるという各地の王権に共通した指向性の存在を推測した。

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