共同研究・競争的資金等の研究課題

2006年 - 2007年

要支援・要介護認定者の機能的体力水準の検討

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(C)  基盤研究(C)

課題番号
18500558
体系的課題番号
JP18500558
担当区分
研究分担者
配分額
(総額)
3,200,000円
(直接経費)
2,900,000円
(間接経費)
300,000円

本研究の目的は、機能的体力テストを虚弱高齢者に実施することの内容的妥当性を検討して、より広範な臨床の場で使用できる評価基準を策定することであった。高齢者用の機能的体力テストは、米国健康体育レクリエーションダンス連盟(AAHPERD)が開発した60歳以上の人のための機能的体力テスト(1989)を原版として、のちに我が国の一般在宅健康高齢者を対象として適用可能な機能的体力(生活体力)検査として改訂された日本版(谷口ら、1998)を使用した。そのテスト項目の中から、本研究では、とくに「缶置き換え作業検査」と「動的バランス検査」の2種類の下位検査を使用して、虚弱高齢者の日常生活のADL自立度の判定に役立つ機能的体力水準を知るための評価値の作成を目指した。
本研究は2年間に渡った。初年度(2006年)においては、2つの機能的体力テストの内容妥当性を検討することを目的とした。具体的には、従来から加齢と体力の関係を知るために有効とされている体力検査項目(握力、5m通常歩行脚筋力)、ならびに高齢者の心身の健康関連指標(Barthel index、老研式活動能力指標、特定高齢者の判定のための運動器の自立度、外出頻度、転倒歴、うつ・不安尺度など)と機能的体力テストとの関連を検討して、本検査の内容妥当性について検討した。その結果、両者には密接な関連が認められ、機能的体力の2検査項目を、虚弱レベルにある高齢者に適用することの有効性が確認された。第2年目(2007年)では、さらに対象者を高齢者の福祉施設(介護老人福祉施設・養護老人ホーム、デイサービスセンター、ケアハウス,軽費老人ホーム、老人福祉センターなど)に居住・通所する虚弱レベルにある250名の高齢者に機能的体力テストならびに健康関連指標を実施して両者の関連性について分析した結果、機能的体力テストの評価段階は、年齢や性別の影響を調整した後にも、対象高齢者の健康関連指標に有意な影響を示すことが明らかとなった。以上の調査結果から、缶置き換え作業とバランス歩行という高齢者のために開発された機能的体力テストの項目は一般の自立した高齢者のみならず、虚弱高齢者に対しても、その機能的体力レベルを判定評価する上で有効な検査であることが実証された。両検査の中でも、とくに缶置き換え作業は、その作業過程に作動記憶の機能を要する運動プロセスを含んでいることから、認知症の重症度検査であるTKW式認知症重症度検査(米倉ら、2005)とも高い関連性を有することが明らかとなった。このことから、本機能的体力テスト項目を認知症の認知レベルを知るための検査具として適用することの可能性も示唆された。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-18500558
ID情報
  • 課題番号 : 18500558
  • 体系的課題番号 : JP18500558