共同研究・競争的資金等の研究課題

2021年4月 - 2024年3月

核内脂肪滴の新規生理機能

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(C)  基盤研究(C)

課題番号
21K06733
体系的課題番号
JP21K06733
配分額
(総額)
4,160,000円
(直接経費)
3,200,000円
(間接経費)
960,000円

コレステロールエステル(CE)とトリアシルグリセロール (TAG)から成る中性脂質をリン脂質一重膜が覆う構造である脂肪滴は、通常小胞体膜から形成される細胞質オルガネラであるが、我々は肝由来細胞では脂肪滴が核膜陥入構造と近接し、タンパク質修飾や遺伝子発現制御に関与するPML小体と複合体を形成して存在すること、核内脂肪滴は小胞体内腔の中性脂質顆粒であるリポプロテイン前駆体に由来し、ホスファチジルコリン(PC)合成を活性化させて小胞体ストレスを軽減する装置として働き得ることを以前に報告した。一方核内脂肪滴は非肝由来細胞でも形成されることから、細胞の種類を問わないユニバーサルな形成機序の存在が示唆されていた。
本計画において今年度はまず非肝由来細胞における新規の核内脂肪滴形成機序を探索した結果、内核膜には本来小胞体に局在する脂質合成酵素群が存在し、核内で直接、中性脂質合成と脂肪滴形成が行われることを明らかにした。さらに細胞質脂肪滴の形成に重要な小胞体膜貫通タンパク質Seipinが、ジアシルグリセロール (DAG)合成酵素であるLipin1 betaの転写を抑制することで核内脂肪滴の形成を負に制御することを見出した。これらの成果は国際学術誌および国内学会において報告した。
一方、核膜の変形を司る分子候補Tの発現量と核内脂肪滴および核膜陥入構造(NR)の形成とが逆相関することを見出した。さらに肝疾患疑い患者の肝生検試料の電顕観察により、人の肝細胞内で実際に核内脂肪滴が頻繁に形成されることが判明した。
他方核内脂肪滴の生理的意義の解明については、一部の脂肪酸結合タンパク質が核内脂肪滴に局在し、がん形成促進因子の転写を制御することを見出した。また一部のDNA損傷修復系分子が核内脂肪滴に局在することを見出した。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-21K06733
ID情報
  • 課題番号 : 21K06733
  • 体系的課題番号 : JP21K06733