研究ブログ

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ライブサイエンス立ち上げについて

私は、2020年1月1日にライブサイエンス(Live-science)という学問分野を立ち上げました。

おそらく有史以前から、人は人前で表現活動をしてきました。

また、これからもこうした表現活動はずっと続いていくことでしょう。

ライブパフォーマンスが引き起こす感動や情動体験、身体の生理的変化は、普遍的に生じています。

それにもかかわらず、その科学的研究は限られています。

 

心理学や認知科学といった分野では、ライブパフォーマンスに関連する心理現象について、少しずつ

研究が進んできているという指摘もあるかもしれません。

しかし多くの場合には、これらの研究では、実験室実験の伝統を踏まえた方法論を用いています。

具体的に言えば、映像や音声といった刺激を用いた、’’ライブパフォーマンスのようなもの’’の研究に

留まっています。

 

現代(2020年時点)では、舞台に持ち運べる大きさ・重量の汎用PCが安価で手に入ります。

そうした、汎用PCを使えば、多チャンネルの同時測定や統計解析のリアルタイム処理、さらには、

視覚効果・音響効果を伴った計算結果の提示までも可能です。

端的に言えば、いま技術面での問題はほとんど残されていません。

 

あとは、ライブパフォーマンスをそのまま捉え、研究として成立させ、精緻に議論を展開していく

ための理論的な枠組みが足りていません。

その枠組みとして、私はライブサイエンスが必要だと考えます。

あくまで科学として、反証可能な仮説生成とその検証により、ライブの表現を追究していきます。

 

具体的な研究テーマには、個別の表現者(演者)や観客のこと、さらには演者と観客の相互作用が

候補になります。

一例に笑いを例にとっても、演芸における間の表現といった文化依存的なテーマから、笑いの伝播

といったライブパフォーマンスに普遍的なテーマまで含まれます。

 

また、認識論上の課題として、’’再現性’’についても活発に議論すべきでしょう。

一回性と一般性はどういった条件下では両立するのか、その共通認識を探るということです。

こうした議論の余地があるのは、学問領域として十全ではないからではありません。

この学問領域がまさに揺籃期にあるからです。

科学的手法を適用するにふさわしい研究対象や研究方法についても厳しく吟味する必要があるのです。

 

方法論は、あらかじめ定まってはおらず、現実的には研究者がどの水準の現象を明らかにしたいのか

によって選ぶということになります。

ただし、3~数千あるいは数万という中自由度については、厳密な数式に基づく(解析的な)方法は

容易ではなく、また、大数の法則に基づく(確率論的な)方法は前提を満たしません。

実際的には、小規模の実験を繰り返し人間行動の観察をすることとそうした事実に基づいた劇場の

シミュレーションを行き来することがスタンダードな方法の一つになるでしょう。

 

以下、私が現時点で想定している研究例を挙げます。もちろんこれに限られるものではありません。

【劇場コミュニケーション】

落語表現と多感覚知覚(例:空間・色彩・季節・肌触り・込み合い・食感)/ライブパフォーマンスにおける集合的感情(例:笑い、感動、鳥肌、没頭体験)/視覚表現の訴求力の定量化/劇場における笑いの伝播と爆笑(一斉発笑)現象

【人間の情報処理と身体】

動画・映像作品への興味度の生理指標(視線、瞬目、身体動揺、姿勢)による推定/演者(例:教師、役者、噺家、政治家)の印象評定/映画・舞台・スポーツの見どころの検出/熟達者と中級者の分岐を決める認識論

【熟達の現場】

フィールドワークによる表現者(例:噺家)の熟達化過程の研究

 

大学院生、ポスドクとしてライブサイエンス分野で研究を行いたい方は、ぜひ野村までご連絡ください。
#researchmapに登録された研究者の方には、連絡先を公開しています。

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