共同研究・競争的資金等の研究課題

2013年

メゾ非平衡系における操作的理論の構築


資金種別
競争的資金

平衡系の統計力学はアボガドロ数個の自由度からなる多体系に関し正確な計算が可能であり、ミクロとマクロを結ぶ理論として著しい成功を収めた強力な理論である。一方、非平衡開放系の対象は広範かつ複雑で、あらゆるダイナミックな現象を含む。従って、熱平衡系におけるエントロピー最大の原理や分配関数の方法に対応する非平衡系特有の基本原理・計算手法も確立すべきであり、従来線形応答領域に限られていたアプローチを超える理論の構築は、現代物理学における最も挑戦的な課題の一つと考えられる。本研究では主にメゾスコピック系の輸送現象、熱平衡状態への緩和過程、非平衡定常状態におけるカレント揺らぎの諸性質について「操作」という観点に基づき統計力学的理論の構築を行う。ここでいう操作とは、素朴な熱力学的操作すべてを含み、その適用範囲は、光ピンセットによるコロイド粒子掃引やスピントモグラフィーによるコヒーレントな状態操作等に拡大しつつある。これらは外場に対する応答をみることで測定手段が全く異なる独立な量の間の関係を確立するためのものである。また、対象系を固定してこのような操作でアクセス可能な物理量のみを扱うことに留意し、逆な力学における熱平衡化を導き、更に非平衡系における大偏差の解析法等を構築する。