共同研究・競争的資金等の研究課題

2008年10月 - 2013年3月

イスラーム圏におけるイラン式簿記術の展開:オスマン朝治下において作成された帳簿群を中心として

文部科学省  NIHUプログラム・イスラーム地域研究公募研究  
  • 高松洋一

資金種別
競争的資金

本研究は、モンゴル期イランにおける書記指南書に見える記述と、オスマン朝の種々の帳簿の実例から導かれた簿記の原理との比較を通じて、オスマン朝を例にイラン式簿記術がいかなる形で実際に伝播し、また発展を遂げたかを明らかにする。イランにおいて簿記の担い手である書記たちは、書記用の指南書を通じて技量を身に付けたと考えられ、これらは写本として伝わっている。しかしイランでは同時代の帳簿の伝存例がきわめて少なく、指南書にある簿記術が実地でどのように応用されたかを知るのは困難である。一方イラン式簿記術を受容したオスマン朝においては、様々な類型で作成された膨大な数の帳簿が現存するものの、書記の技術はもっぱら官房内の口伝によって継承されたためか、書記用の指南書の存在は知られておらず、簿記の実態は個別の帳簿の実例から帰納的に導き出さざるを得ない。