2019年4月 - 2024年3月
戦争と協力の進化:集団間競合と集団内協力の比較認知科学的検討
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A) 基盤研究(A)
戦争と協力。この「ヒトらしい」両極的な性質の進化的起源を、実証研究を通して明らかにするのが本研究の目的である。ヒトは集団で殺し合うこともあれば、高度な協力関係を構築することもできる。どちらもヒトの専売特許だと考えられてきた。このような性質はどのように進化したのだろうか。
まず研究を始めるにあたり、協力行動を集団協力と二個体間協力に分け、チンパンジーが得意とする集団協力は外集団脅威に対抗する形で進化し、ボノボがみせる二個体間協力は自己家畜化による寛容社会で育まれたという仮説を提唱した(山本 2021; Yamamoto 2020)。この仮説を検証するため、飼育チンパンジー集団に対して知らない個体(外集団)の音声を流すプレイバック実験をおこない、外集団の脅威が内集団の結束を高めることを明らかにした(Brooks et al. 2021a)。また、チンパンジーとボノボの社会性について、オキシトシン投与がアイコンタクトに及ぼす影響を検証することによって、生理反応レベルでの種差を見出した(Brooks et al. 2021b)。ヒトとボノボの共通点として自己家畜化が挙げられているが、家畜化プロセスが社会性におよぼす影響を検証するためには、家畜化された動物での研究が欠かせない。ウマでおこなった研究からは、ウマが他者の知識状態を理解するという高度な社会的認知能力が明らかとなった(Trosch et al. 2019 )。さらに、ドローンを用いたポルトガルの野生ウマ集団の研究では、かれらの社会が重層構造を持つことを見出している(Maeda et al. 2021)。ヒトの重層社会の萌芽をウマ社会に見出した成果である。
これらの成果を、査読付き英文学術論文10本、英文著書分担執筆2本(以上、研究代表者分のみ)等にまとめて発表した。
まず研究を始めるにあたり、協力行動を集団協力と二個体間協力に分け、チンパンジーが得意とする集団協力は外集団脅威に対抗する形で進化し、ボノボがみせる二個体間協力は自己家畜化による寛容社会で育まれたという仮説を提唱した(山本 2021; Yamamoto 2020)。この仮説を検証するため、飼育チンパンジー集団に対して知らない個体(外集団)の音声を流すプレイバック実験をおこない、外集団の脅威が内集団の結束を高めることを明らかにした(Brooks et al. 2021a)。また、チンパンジーとボノボの社会性について、オキシトシン投与がアイコンタクトに及ぼす影響を検証することによって、生理反応レベルでの種差を見出した(Brooks et al. 2021b)。ヒトとボノボの共通点として自己家畜化が挙げられているが、家畜化プロセスが社会性におよぼす影響を検証するためには、家畜化された動物での研究が欠かせない。ウマでおこなった研究からは、ウマが他者の知識状態を理解するという高度な社会的認知能力が明らかとなった(Trosch et al. 2019 )。さらに、ドローンを用いたポルトガルの野生ウマ集団の研究では、かれらの社会が重層構造を持つことを見出している(Maeda et al. 2021)。ヒトの重層社会の萌芽をウマ社会に見出した成果である。
これらの成果を、査読付き英文学術論文10本、英文著書分担執筆2本(以上、研究代表者分のみ)等にまとめて発表した。
- ID情報
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- 課題番号 : 19H00629
- 体系的課題番号 : JP19H00629
この研究課題の成果一覧
絞り込み
論文
3-
Current Opinion in Behavioral Sciences 47 101205-101205 2022年10月 査読有り
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Frontiers in Ecology and Evolution 10 2022年6月22日 査読有り
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Ecology and Evolution 11(21) 14392-14404 2021年10月16日 査読有り
講演・口頭発表等
5-
The 17th International Symposium of Primatology and Wildlife Science 2022年3月
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The 17th International Symposium of Primatology and Wildlife Science 2022年3月
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第36回日本霊長類学会 2020年12月5日
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FSコロキアム:ヒトを見るようにサルを見る 2020年9月4日 招待有り
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第34回日本霊長類学会 2018年7月14日