2010年6月
多系統萎縮症(MSA)における口腔衛生状態の悪化とその関連因子
障害者歯科
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- 巻
- 31
- 号
- 2
- 開始ページ
- 184
- 終了ページ
- 192
- 記述言語
- 日本語
- 掲載種別
- 研究論文(学術雑誌)
- 出版者・発行元
- (公社)日本障害者歯科学会
多系統萎縮症(MSA)では、呼吸器障害や呼吸器感染の発症頻度が高く、これらはしばしば生死にかかわる問題となる。MSAに伴い発症する呼吸器感染症の原因には口腔機能障害や口腔衛生との関与が予測されることから、MSA患者の口腔衛生状態とこれに関係すると思われる口腔機能の実態を明らかにすることを目的として、本研究を立案した。対象としてMSA患者19名、健常者20名を選択した。口腔衛生状態の評価として歯面ごとのプラーク付着の記録(PCR)とう蝕活動性試験、身体能力として機能的自立度評価法(FIM)中の運動項目と握力、口腔機能の評価として安静時と刺激時の唾液分泌量、/ta/および/ka/音の音節反復速度、舌左右反復速度、舌最大突出力を測定して両群間で比較した。MSA群では、PCRとう蝕活動性が有意に高く、口腔機能や身体機能では全評価項目において有意に低下していた。また、MSA群ではPCRと、/ta/音、/ka/音の音節反復速度、FIMとの間に負の相関、罹病期間との間に正の相関を認めた。MSA群の口腔衛生状態を悪化させる要因としては、舌の運動能力の低下、日常生活動作(ADL)の低下、唾液分泌量の低下、罹病期間の延長が複合して関与しているものと思われた。以上よりMSA患者の病態やADLを考慮し、多職種連携のもとに継続的な口腔ケアを行う必要性が示唆された。(著者抄録)
- ID情報
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- ISSN : 0913-1663
- eISSN : 2188-9708
- 医中誌Web ID : 2010260371