2006年
多文化関係における日本的コミュニケーションの有効性:「察し」に内蔵された肯定的側面
多文化関係学
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- 巻
- 3
- 号
- 開始ページ
- 151
- 終了ページ
- 160
- 記述言語
- 日本語
- 掲載種別
- 研究論文(学術雑誌)
- DOI
- 10.20657/jsmrejournal.3.0_151
- 出版者・発行元
- 多文化関係学会
本稿の目的は、日本文化における対人行動規範の説明モデルとして提示された「遠慮と察しのコミュニケーション(Ishii, 1984)」の「察しのコミュニケーション」が多文化的状況において有用であることを論証しようと試みることである。「遠慮と察しのコミュニケーション」に限らず、文化特定とみなされる要素は、特殊と普遍、文化特定と文化一般、文化と文明といった二元論的区分のなかで、いったん特殊というカテゴリーに判別されると、その範疇を超えて分析や考察をすることが難しくなり、新しい研究の方向性が閉ざされる。そこで、文化特定な要素である「察しのコミュニケーション」が多文化的状況においても有用性があると仮定し、多文化的なコンテクストにおいて文化特定要素が持つ可能性について考察を試みた。本稿では、「察しのコミュニケーション」は、メッセージの意味を読み取る推察力、そして他者に対して配慮、共感できる能力を養成する特質を持つことを示し、「察しのコミュニケーション」によって培われるそれらの能力が、多様性に関する知識と組み合わされた場合に、多文化的状況を多元的に把握する上で有用である、という結論に至った。察しの能力を基盤とした多元的な状況把握力は、日本人が今後直面する種々の多文化的状況において、人々が持つ多様性の発現を促し、互恵的な関係を構築する一助となる可能性があると考えられる。
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- DOI : 10.20657/jsmrejournal.3.0_151
- CiNii Articles ID : 110009665924