2020年4月 - 2023年3月
感染症の発症をエンドポイントとした魚類免疫毒性評価系の確立
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
魚体重約5 gのコイにAeromonas salmonicidaを浸漬感染させ,1週間後に外観症状を確認した上で,頭腎,体腎,肝膵臓をそれぞれ採取した。サルモニシダ症を発症した個体においては,頭腎が肥大し,体腎が原型を留めないほどの重篤なダメージを受けていた。生殖腺の外観から雌雄を判別し,感染区(n = 4)と対照区(n = 3)ともに雄から採取した頭腎,体腎,肝膵臓をRNA-seqに供した。その結果,各サンプルから平均2千万リード(Q > 30)の良好な結果が得られた。得られた配列をコイのゲノム配列にマッピングし,発現変動遺伝子を抽出した。頭腎,体腎,肝膵臓の各臓器からそれぞれ69038,69650,59430の転写産物の発現が検出され,そのうち400,479,227の遺伝子の発現が有意に変動していた。これらの結果から,A. salmonicidaの感染によって,腎臓の機能が重篤な影響を受けていると推察された。このことは我々の先行研究で実施した組織学的観察の結果と矛盾しなかった。発現が変動していた遺伝子群のオントロジーから,サルモニシダ症を発症した個体においては液性免疫,とくに補体系の活性が抑制されていること,また,頭腎におけるヘモグロビン合成の抑制や肝膵臓における糖およびアミノ酸の代謝抑制が生じていることが推察された。これらの影響を裏付けるマーカーを測定することで,サルモニシダ症の重篤度の分類を試みる予定である。
- ID情報
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- 課題番号 : 20K12183
- 体系的課題番号 : JP20K12183