2017年4月 - 2020年3月
下水処理水に残留する医薬品等による魚類の感染症誘発に対するリスク評価
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
本研究は,魚類を対象として感染症の発症を主要なエンドポイントとした免疫毒性評価手法を確立し,下水処理水中に含まれる医薬品等の感染症の発症リスクへの寄与を明らかにすることを目的としている。
平成30年度も前年度に引き続き,愛媛県内の下水処理場の放流水を定期的に採取し,医薬品および生活関連化学物質(PPCPs)のモニタリングを実施した。モニタリング調査の結果,解熱鎮痛消炎剤や一部の抗菌剤などが高頻度かつ比較的高濃度で検出され,前年度の調査結果と一致していた。
前年度までに確立した感染実験にて,死亡した個体からAeromonas salmonicidaを定量的PCR法にて検出するための条件検討を行った。魚体重約0.6 gのコイに対して本菌を感染させ,死亡個体から腹水を採取した。また,その他の発症個体(うち一部は死亡個体)の全魚体,鰓または内臓を採取し,DNAを抽出した。腹水および抽出DNAをテンプレートとして複数条件にてPCRを行ったが,A. salmonicidaは検出されなかった。このことから,本試験で用いたA. salmonicidaは全身感染を起こさず,局所的に病変部にて増殖するものと考えられた。
また,先行研究にてリポ多糖の存在下で魚体中への化学物質の取込量が増加する可能性が示されていたため,本研究においてもA. salmonicidaに感染したコイで医薬品の取込量が増えるかを,3種の医薬品の混合物を対象に検証した。その結果,3種の化合物のうち相対的に水溶性が高いものは,感染魚において60%ほど取込量が増加していた。一方,脂溶性が高い化合物は3割程度取込量が減少した。このことから,病原体への日和見感染が,易水溶性化学物質の取込量の増加による作用効果の増強を引き起こす可能性が示唆された。
平成30年度も前年度に引き続き,愛媛県内の下水処理場の放流水を定期的に採取し,医薬品および生活関連化学物質(PPCPs)のモニタリングを実施した。モニタリング調査の結果,解熱鎮痛消炎剤や一部の抗菌剤などが高頻度かつ比較的高濃度で検出され,前年度の調査結果と一致していた。
前年度までに確立した感染実験にて,死亡した個体からAeromonas salmonicidaを定量的PCR法にて検出するための条件検討を行った。魚体重約0.6 gのコイに対して本菌を感染させ,死亡個体から腹水を採取した。また,その他の発症個体(うち一部は死亡個体)の全魚体,鰓または内臓を採取し,DNAを抽出した。腹水および抽出DNAをテンプレートとして複数条件にてPCRを行ったが,A. salmonicidaは検出されなかった。このことから,本試験で用いたA. salmonicidaは全身感染を起こさず,局所的に病変部にて増殖するものと考えられた。
また,先行研究にてリポ多糖の存在下で魚体中への化学物質の取込量が増加する可能性が示されていたため,本研究においてもA. salmonicidaに感染したコイで医薬品の取込量が増えるかを,3種の医薬品の混合物を対象に検証した。その結果,3種の化合物のうち相対的に水溶性が高いものは,感染魚において60%ほど取込量が増加していた。一方,脂溶性が高い化合物は3割程度取込量が減少した。このことから,病原体への日和見感染が,易水溶性化学物質の取込量の増加による作用効果の増強を引き起こす可能性が示唆された。
- リンク情報
- ID情報
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- 課題番号 : 17K00583
- 体系的課題番号 : JP17K00583