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2019年12月7日

神道美術と密教神話――真福寺蔵「剣図」をめぐって――

国際シンポジウム 東アジア文化交流―芸と術―
  • 鈴木 英之

記述言語
会議種別
口頭発表(一般)
主催者
浙江工商大学東亜研究院 早稲田大学日本宗教文化研究所 蔚山大学校日本語日本学科
開催地
中国 浙江省 浙江工商大学東亜研究院

日本中世において、天皇の権威の象徴である三種の神器(剣・内侍所・神璽)は、本地垂迹説を背景とした密教的な解釈のもとに図像化された。いわゆる「三種神宝図」である。特異な形状の「法剣(宝剣)」と「梵筺」(内侍所)、「鬼面独古」(神璽)から成る「三種神宝図」は、中世の両部神道書『麗気記』に収載される神道図像(「神体図」)のひとつだったが、本図は、神道灌頂という密教儀礼で本尊として用いられたことから、中世から近世にかけて幅広く流布した。全国に作例が多数のこされているが、真福寺所蔵の『釼図』は、南北朝期の最初期の三種神宝図として注目される。
真福寺には、この『釼図』のほかに、その注釈書である『宝釼図注』『法釼図聞書』が所蔵される(ともに南北朝期の成立と推測)。両書は、三種神宝図のうち主に「法剣」について解説したものである。先行研究において、三種神宝図は『麗気記』の成立と密接な関係があることが指摘されるが、興味深いことに、『宝釼図注』『法釼図聞書』には『麗気記』やその類書からの引用は全く認められない。主に密教典籍や弘法大師伝にもとづく解釈がなされるなど、「法剣」をめぐって、『麗気記』とは異なる神話が形成されていることがわかる。
『法釼図聞書』によれば、仏が成道する際には、必ず法剣を感得して悟りを得るという。また高野山の根本大塔を建立する際にも法剣が出現し、それを弘法大師が模写したのが「法剣」とされる。これは、弘法大師伝における根本大塔からの法釼出土というモチーフを、神体図のひとつ「法剣」と結び付けた、新たな密教神話の構築といえるだろう。『宝釼図注』『法釼図聞書』からは、「法剣」が、単なる神道図像に留まらず、密教の神話世界の中にまで大きな広がりを有していることを窺い知ることができるのである。